先日、母校である石川県の小松市立中海小学校が150周年を迎えた。うれしい事に、その記念講演をさせて頂いた。小学校を卒業して24年。もうそんな月日が経ったのかと驚いてしまうが、それもそのはず。小学生の頃は永遠に続くような気がしていた飛び込み競技も引退し、今は子供が2人いる。小学校時代には想像もしていなかった未来だ。
私が生まれ育った中海地区は、小学校だけではなく中学校も山の上にある。そのため、子供たちは9年間もの間、険しい道を歩いて登校しなければならない。しかしその半面、登下校するだけでも自然と足腰が鍛えられる環境なのだ。
北陸の冬と言えば「雪」。冬本番になると、小学校の制服の上にスキーウエアを着て登校するのが当たり前だった。校舎の隣には「スキー場」と呼ばれる山がある。そこでは、ソリ滑りや坂を転げまわって楽しんだ記憶がよみがえる。その他にも、雪を集めてかまくらを作ったり、自分たちより大きな雪だるま作りに挑戦したり。寒さの厳しい地域だったが、いつも休み時間や体育の授業が楽しみで仕方がなかった。
実家の周辺も、山や川など自然にあふれた場所にある。そのため、飛び込みの練習以外の時間は自然の中で遊ぶ事がほとんどだった。子供にとって、山の中には魅力や好奇心を刺激するものがいっぱい。もちろん危険な事も多いが、それすらも学びになっていた。いつも生傷が絶えないほど「おてんば娘」だった幼少期。しかし、遊びの中で身につけた動きや野生的な勘のようなものが、飛び込み競技に生かされていた事は言うまでもないだろう。
今回、久々に母校を訪れそんな日々が湧き出るように思い出された。
150年前から、たくさんの子供たちを育ててくれた校舎。少しずつ改修はされているものの、ほとんど変わらない外観。たくさん走り回った大きな運動場。その奥には、ひし形の池がある。のぞいてみると、昔と変わらず元気に魚が泳いでいた。
6年間の思い出が詰まった母校での講演。同じ環境で育っている子供たちに、何を伝えられるのか。これまでもさまざまな場所で講演をさせてもらったが、今回はどこか違う緊張感があった。私の話を一生懸命に聞いてくれる子供たち。そのまなざしは、未来への希望に満ちていた。わずか30分ほどの講演ではあったが、何か1つでも心に残る言葉があればと願っている。
当たり前だった目の前に広がる大自然。コンクリートだらけの大都会に住む今は、どれほど恵まれた環境だったかと気づかされる。中海の子供たちは本当に素直だ。この大自然に守られながら、のびのびと成長している事がとても伝わってきた。
150周年という長い歴史の中で受け継がれてきた良き伝統や文化。この先も、子供たちが自信と誇りを胸に、安心して羽ばたける場であり続けてほしい。そして、私も微力ながらにそのお手伝いができればと考えている。(中川真依=北京、ロンドン五輪代表)






