データ分析で部活動をアップデート。ワークショップ「STEAM バスケットボール(高校編)」が1月18日、市立長野高のバスケットボール部員30人に対して行われた。経済産業省「未来の教室」の実証事業として、株式会社STEAM Sports Laboratoryが監修。部員らはデータの重要性と活用方法を学び、まずは座学でデータ分析からチームの課題を発見。実技で対策を実践・修正してレベルアップを図った。

より実践的内容

今回は座学と実技を組み合わせた、より実践的な内容となった。

まずは座学。今回はバスケットボールに直結する4つの指標を理解し、活用することでチームのレベルアップに結びつける。中央大理工学部数学科の酒折文武准教授は「バスケットボールの得点は得点効率(質)と攻撃回数(量)で決まります。今日はチームの得点力を考察するための4Factors(要素)を主な題材とします」とテーマを話した。

パソコンでチーム分析を行う市長野高バスケットボール部
パソコンでチーム分析を行う市長野高バスケットボール部

Bリーグなどのデータ分析を行うデータスタジアム株式会社の柳鳥亮氏は「4Factorsの重要性と活用法」について説明した。「4Factorsは攻撃の終わり方にフォーカスした指標。その攻撃の効率を求めています。実数ではなく割合・確率で見ることで公平に評価できます」。昨年5月に行われたBリーグチャンピオンシップ(アルバルク東京対千葉ジェッツ)での4つの指標を示し、選手らに分析させた。

「4Factorsの重要性と活用法」について話すデータスタジアムの柳鳥亮氏
「4Factorsの重要性と活用法」について話すデータスタジアムの柳鳥亮氏

4Factors

<1>eFG%(エフェクティブ・フィールドゴール・パーセンテージ)3P成功数を1・5倍にして計算するシュート成功率

<2>ORB%(オフェンスリバウンド獲得率)自チームのシュートが外れた時にオフェンスリバウンドを獲得する確率

<3>TOV%(ターンオーバー率)オフェンス中シュートを打てず攻撃が終わる確率

<4>FTR%(フリースロー獲得率)フリースローを獲得できる確率

座学後半は、株式会社STEAM Sports Laboratoryの岩瀬英治氏のもと、自チームの分析を行った。過去の試合のデータをパソコンに入力して、4Factorsを算出。課題や気づきを議論した。

最後は実技。男女それぞれ2チームに分かれて、10分ハーフのゲームを行った。前半終了後、選手が感じた課題と、データから出した4Factorsを照らし合わせた。後半への戦略づくりにいかした男子Bチームは逆転勝ち。女子Bチームは同点に追いついた。データ分析でプレーを修正し、結果に結びつけた。選手からは「感覚と数字は違うことが分かった」「客観的にプレーを考えられた」「後半のプレー改善につなげられた」などの声があがった。

データで前半の課題を分析した後にゲームに臨む市長野高バスケットボール部
データで前半の課題を分析した後にゲームに臨む市長野高バスケットボール部

まとめでは、講師陣からエールが送られた。柳鳥氏は「この数字を定期的にとって試合を振り返ることで、良い悪いの評価ができます。この取り組みを引き続き続けて欲しい。この確率を上げるためにはどうすればいいかなど、別に考えることもあります。4Factorsの先を見てほしい」。酒折氏は「アシストなど4Factorsでは出てこない貢献もあります。数字だけではない背景も考えて欲しい」。岩瀬氏は「スポーツもデータもSTEAMもすべてはつながっています。バスケットボールを数字で分解することで上手になり、数学のおもしろさにも気づいてもらえたら」と話した。【豊本亘】

◆株式会社STEAM Sports Laboratory  2018年11月設立。山羽教文代表取締役。本社は東京都港区南青山。子どもたちの「主体的・対話的かつ深い学び」を引き出すために、スポーツシーンにおける問題・課題を教材にした「新たな学びの場」の創出を目指している。