ゴルフ界でも若手の台頭が目立つ昨今、「令和=若手」の時代なのか? と思ったら、案外そうではないのかもしれない。

令和初のツアーは、女子では黄金世代をけん引する1人、勝みなみ(20=明治安田生命)がパナソニック・レディースを制したとはいえ、男子の中日クラウンは、46歳の宮本勝昌(ハートンホテル)が勝った。

第60回中日クラウンズ最終日 通算9アンダーで優勝しトロフィーを掲げる宮本勝昌(2019年5月5日撮影)
第60回中日クラウンズ最終日 通算9アンダーで優勝しトロフィーを掲げる宮本勝昌(2019年5月5日撮影)

昨年、18年も継続していた賞金シード権を失ったベテランが、いきなり存在感を見せたのだ。若手の勢いで押すゴルフが壮快なら、ベテランの活躍する姿は痛快である。

取材に訪れたダイヤモンド・カップの第1日(9日)。首位と2打差の4位につけたのは50歳の手嶋多一(ミズノ)だった。

コースが硬く難コースと言われる上に、5メートル以上もの風が吹き荒れる中、培ってきた経験を生かした。強風の中では飛距離は「あまり意味をなさない」と話し、終始、フェアウエーをキープするゴルフを心がけた。

悪条件の中での戦いを知っているかのように、あえて攻めのゴルフを封印し、安定感を求めて戦った。「硬いグリーンが好き。手前から攻めないといけないし、いろいろ考えないといけない」とベテランらしいコメント。

昨年、22年連続で保持してきた賞金シードを失った。心の中はその奪回に向けて熱く燃えているはずだが、それをみじんも感じさせず競技の内外でいぶし銀の技を見せた。

第49回東海クラシック初日 8番でホールインワンの手嶋多一はボールとクラブを手に笑顔を見せる(2018年9月27日撮影)
第49回東海クラシック初日 8番でホールインワンの手嶋多一はボールとクラブを手に笑顔を見せる(2018年9月27日撮影)

もう1人、存在感を見せたベテランがいた。谷口徹(51=フリー)だ。第2日の12番パー3で男子ツアーで令和初のホールインワンを奪った。

「まったく見えなかった。ギャラリーが1人しかいなくて『おおっ』くらいだったからうまく寄ったのかなと思っていた」と本人もびっくりだったが、その球を1人だけのギャラリーにあげる粋な計らいも。

前週の女子のツアーで先にホールインワンがあったが、「俺の方が難しい」とやると、前週、優勝した宮本を出し、「宮本くんは優勝、僕はホールインワン。オッサンばかりですね」とさらに笑わせる。コメント力も、さすがのベテランの味だ。結局、予選落ちだったが、何かをやってくれるんじゃないか? ベテランにはただでは終わらない、そんな期待感がある。

これはゴルフの醍醐味(だいごみ)だと思う。幼少期からできる上に、長く第一線で競技を続けられる。技を磨けばパワーにだって勝ることもある。思えば、4月のメジャー第1戦の「マスターズ」で劇的な復活劇を遂げたタイガー・ウッズ(43=米国)も以前の豪快なスイングからコンパクトなスイングに変更し、新たな一面をのぞかせた。

若手とベテランの「競演」、令和のゴルフがますます楽しみになった。【松末守司】

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)