まさに記録的な強さだ。2位で出た稲見萌寧(もね、21=都築電気)が逆転で、歴代最多に並ぶ月間3勝目を挙げた。今年8戦4勝も、昨年と統合された今季5勝目もダントツ。5バーディー、1ボギーで3日連続で67で回る安定感で、通算12アンダー、201とし、首位から出た山下美夢有を逆転した。今季の賞金は早くも1億円を超え、賞金女王争いでも3位浮上。世界ランキングでも日本勢4番手浮上は確実で、東京五輪出場も夢物語ではなくなってきた。

 

競り合ったら負けない勝負師は、勝利の手応えを右手で示した。14番パー4。稲見は1打差で追ってきた申ジエがボギーとした直後、1・5メートルのバーディーパットを決め、右手でこの日初めてガッツポーズ。元世界ランキング1位の難敵との差を3打に広げた。そのままの勢いで終盤を乗り切ってウイニングパットを決めると、両手を広げて喜びを表現した。88年のツアー制施行後では06年8月の大山志保、19年11月の鈴木愛に並ぶ最多の月間3勝。「自分でもビックリ。勝てるだけ勝ちたい」。今年は何と8戦4勝、勝率5割。不動裕理が持つ03年の年間最多10勝超えも見えてきた。

出だしの雲行きは怪しかった。1番パー4はティーショットを左バンカーへ。出すだけで精いっぱいの選手が多い難しいバンカーだが「狙えるところだった」と8メートルにつけ、難しいラインのパットを沈めた。ピンチが一転してバーディー発進。勢いに乗った。

今大会でキャディーを務めた奥嶋誠昭コーチは「絶対音感じゃないけど、距離感がすごい。2、3ヤード刻みで打てる」という。“絶対距離感”ともいえる特殊能力が、最大の強みだ。昨季のパーオン率も1位。稲見も「先輩方に『あなたは失敗しても取り戻せるでしょ』と、よく言われる」と、修正力の高さに周囲も脱帽していることを明かした。

2年半指導する同コーチは「パターだけが弱点だったが、今年から良くなった。ちょっとした変化」と続けた。今年から右脇にこぶし1つほどの空間をつくって打った途端、動きがスムーズになりパットが入り始めた。

コロナ禍でもあり、観衆の前での優勝は今季5度目で初めてだった。「ギャラリーさんの前の方がいい」と、期待感の高まりを力に変えられる。さらに注目度が高まる五輪も、出場権を左右する世界ランキングも更新されれば、現在39位の稲見が38位の鈴木愛を抜き、日本勢4番手となるのは確実。今は「結果的に出られたら」と話す五輪出場を、以前は「夢」と語っていた。驚異の勝率5割が続けば、夢が現実となるのは時間の問題かもしれない。【高田文太】

 

◆稲見萌寧(いなみ・もね)。1999年(平11)7月29日、東京生まれ。9歳でゴルフを始める。18年のプロテストに高卒で1発合格。昨年のセンチュリー21レディースで初優勝。168センチ、58キロ。名前はフランスの画家と同じ読み方だが由来は「クロード・モネではないみたいです。世界に出ても覚えてもらえるように、つけてもらいました」

 

<稲見萌寧の優勝クラブ>▼1W=キャロウェイ マーベリックサブゼロ(シャフト=USTマミヤ ジ・アッタス5、硬さS、ロフト10・5度)▼3W=ダンロップ スリクソンZX(15度)▼5W=同(18度)▼ユーティリティー=ブリヂストン TOUR B JGRハイブリッド(4U22度、5U26度)▼アイアン=5I~PW=テーラーメイド P770▼ウエッジ=タイトリスト ボーケイ SM8 52-08F(52度)、同SM8 58-08M(58度)▼パター=テーラーメイド トラスTB1▼ボール=ブリヂストン TOUR B XS

 

◆女子ゴルフの東京五輪代表選考 6月28日付の世界ランキングに基づく五輪ランキングで、出場60人が決まる。各国上位2人に出場権が与えられ、五輪ランキング15位以内に3人以上いる国は、最大4人まで出場権を得る。4月19日付の最新世界ランキングで日本勢は畑岡奈紗の10位が最上位。19位渋野日向子、24位古江彩佳、38位鈴木愛と続き、稲見は39位で5番手。

 

現状の順位なら、日本女子で出場権を得るのは畑岡と渋野の2人。世界ランキング15位以内に層の厚い韓国と米国勢は5人ずつおり、実質、出場がかなわない5人目などを除いた五輪ランキングでは、渋野は15位。稲見は五輪ランキングで日本勢2番手となるか、3、4番手でも渋野らとともに15位以内に入れば、出場権を手にできる。また、日本とフィリピン国籍を持つ笹生優花は、母の母国フィリピンで1番手で、フィリピン代表として出場する意向を示している。