卓球世界選手権の混合ダブルスで銀メダルを獲得した石川佳純(22=全農)が、中国・蘇州に入った後、1度だけ鬼のような形相を見せたことがあった。

 大会開幕前日の4月25日。午後2時からの組み合わせ抽選会に向かうため、記者は、練習を行った本番会場を約1時間前に去ろうとした。その出入り口で係員には英語も、日本語も通じず、取材に必要な通行証を受け取れずに苦戦していた。思わず近くにいた石川に助けを求め、石川に同行する中国人コーチに通訳をお願いした。すると「私が行きます」と、迷わず石川が一歩前に出た。

 係員に向かって話す流ちょうな中国語は、どんどん語気が強まった。さすがは世界5位。係員も「これはまずい」と思ったようで、その後は通行証のある別会場まで丁寧に案内された。

 「中国の人には強く言わないとダメなんです。『パス(通行証)を渡して抽選会場に2時までに連れてくるように』と言っておきましたから」と、いつもの笑顔に戻って話した。抽選会後も「ちゃんと間に合いましたか?」と心配された。この頼もしさと責任感の強さ、細やかな気配りで、混合ダブルスでも1歳下の吉村真晴(愛知工大)を引っ張った。【高田文太】