女子70キロ級の新井千鶴(24=三井住友海上)が2連覇を飾った。決勝は世界ランキング2位のガイー(フランス)に一本勝ち。昨年の初優勝以降、4大会連続で優勝を逃し、その雪辱を果たした。この階級での日本勢の2連覇は、隔年開催だった01、03年の上野雅恵以来15年ぶり。海外勢の層が厚い中量級に新たなエース候補が現れた。

新井は優勝が決まると天井を見上げた。こぼれ落ちる涙が止まらない。「昨年から勝ちきれなくて…。本当にうれしい。やっと(上野)先生に並べた」と声を詰まらせた。

決勝は開始16秒でガイーに技ありを奪われた。コンタクトが外れるハプニングもあったが、装着する時間で心を落ち着かせた。「ここで絶対に負けない」。組めない中、果敢に攻め続けた。1分16秒、相手を崩して得意の内股で技ありを奪い、縦四方固めで合わせ技一本。勝負を決めた。

世界女王の重圧に苦しんだ1年だった。昨年12月のグランドスラム(GS)東京大会、今年のGSパリ大会と準優勝。4月の選抜体重別選手権決勝では大野に一本負けし、代表2番手での選出となった。「このチャンスを必ずものにする」。強い覚悟を持って今大会まで準備した。

世界で勝つための戦術を追求し、<1>変則技<2>リカバリーに重点を置いた。172センチの長身から放つ強烈な内股が警戒され、組んでもらえないことを想定し、変則技に取り組んだ。引き手を下げられた不利な体勢から払い腰や一本背負いなどを反復。稽古熱心で体を追い込み過ぎるため「オンとオフ」の切り替えも心掛けた。

20年の大勝負で頂点に立つためにも、決して慢心はない。「心技体」ともに過去最強を突き詰める。「自分がどう強くなりたいか。その1点に集中したい」。2連覇してもまだ“未完成”と捉え、世界女王は歩みを止めない。【峯岸佑樹】

◆新井千鶴(あらい・ちづる)1993年(平5)11月1日、埼玉県生まれ。7歳で柔道を始める。埼玉・児玉高-三井住友海上。15年世界選手権5位。17年GSパリ大会、同全日本選抜体重別選手権、同世界選手権優勝。世界ランク6位。左組み。得意技は内股。趣味は読書。172センチ。