「最重量級のホープ」が、個人で初の世界切符をつかんだ。女子78キロ超級アジア女王の素根輝(あきら、18=環太平洋大)が決勝で、同世界女王の朝比奈沙羅(22=パーク24)を下し、2連覇を達成。

延長の末、9分超の激闘を制し、対朝比奈を5連勝とした。連覇は10年に9連覇を果たした塚田真希以来となった。大会後の強化委員会で世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)の女子代表が発表された。

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優勝を決めた瞬間、力強く右拳を握った。素根は朝比奈に5連勝とし、初の世界選手権代表に決まった。「ようやく東京五輪のスタートに立った。本当の勝負が始まる」。真っ白な歯を見せながらも、表情を引き締めた。9分5秒の死闘だった。延長戦に突入し、互いに指導2ずつで迎えた8分過ぎ、得意の大外刈りと背負い投げを連発。引き手を持たせてもらえない中、前へ、前へ-。武器の粘り強いスタミナと意地と気持ちで、最後は朝比奈の右足を払ってのけ反らせ、指導3の勝利を引き寄せた。

1年前の悔しさが成長につながった。昨年4月の選抜体重別選手権と全日本選手権でも朝比奈に2連勝したが、世界選手権の個人代表に選出されなかった。それでも腐らずに「前だけ見る」と心に決め、同9月のアジア大会などの国際大会を制して、実績を積みながら世界女王の背中を猛追した。

今年4月には故郷の福岡県を離れ、岡山県の環太平洋大に進学。食事面をサポートする母美香さん、稽古相手の兄勝さんとともに引っ越した。実家の車庫を改造した「虎の穴」で使っていた重さ100キロの筋力トレーニング機器なども全て持ち込んで、あえて環境の変化をなくした。稽古や試合では“平成の三四郎”こと92年バルセロナ五輪男子71キロ級金メダルの古賀稔彦氏から「気持ちを上げる」助言を受け、冷静さを保った。「東京五輪金メダルを絶対に夢で終わらせない。最後に笑うのは自分」。福岡で「無敵女子」と呼ばれた18歳は、さらなる進化を誓った。【峯岸佑樹】