「野球やサッカーのように、柔道も前に進まないといけない。強い思いがあり、参加させていただいた」

柔道男子73キロ級で16年リオデジャネイロ五輪金メダルの大野将平(28=旭化成)が、口元を引き締めていた。

19日、三重県内で高校生約100人を集めた合同稽古を終えた後のことだった。本来であれば、8月の東京五輪で2連覇が絶対視されていた日本柔道界の顔は、コロナ禍での国内柔道界におけるこの日の価値を説いていた。4県から高校生が集まり、20日からは中止となった高校総体の代わりの意味も込めて、大会が開かれる。接触競技として、大会開催などが不透明な現状では、1つ前に進む動きになる。

大野自身にとっても意味ある稽古だった。7カ月間伸びっぱなしという髪は、どこかライオンのようで、一層王者の風格の印象を増すが、その理由は拠点の天理大から出ることがなかったから。この日が約半年ぶりの対外稽古だった。「新鮮ですし、正直にうれしかった」と声が弾んだ。

稽古では大外刈りの実演もし、その技術を丁寧に伝えた。「いい思い出になってくれたらうれしいです。できれば大学生になっても柔道を続けてほしい」と願っていた。