フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦NHK杯が、27日から大阪・東和薬品ラクタブドームで行われる。

新型コロナウイルスの影響でGP第2戦スケートカナダ、第4戦フランス杯が中止。日本勢初登場となる今大会を前に男女シングル、アイスダンスの4選手が日刊スポーツのフィギュアスケート総合情報ページ「Figure365」の取材に応じた。テーマは「フィギュアと私」。本日から3回にわたって連載する。

第1回は女子でGP初優勝を狙う坂本花織(20=シスメックス)が登場する。【聞き手=松本航】

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-4月中旬から5月末の約1カ月半、コロナ禍で氷に上がれない期間が続いた

坂本 1カ月以上滑らないのは2回目でした。1回目はジュニアだった16年の右足すねの疲労骨折。その時はリハビリを頑張っていて、今回のようにシーズンオフの時期は初めてでした。「これだけ暇っていうことは、今までの人生で1日のほとんどを、スケートで埋め尽くしていたんだな」と思い「ほぼスケートだな。自分って『スケート大好き人間』だな」と考えました。最初の3日間ぐらいは「オフするぞ~!」といった感じでしたが、すぐに「早く滑りたいな」と思うようになっていました。

-これまで早朝から練習し、その足で学校へ向かう慌ただしい毎日だった

坂本 スケート人生の折り返しを初めて考えたのが、今回のオフでした。今、引退するタイミングを決めているわけではないのですが、例えば(多くの選手の節目となる)大学4年生までと考えたら「4歳から16年スケートやってきて、あと2年半!? そんなに前から折り返してたのか」となって…。「もう、そんなに選手人生、長くないな」と思いました。

-意識が変わった

坂本 何歳まで続けるかは分からないけれど、明らかに折り返し地点はとっくに過ぎているので。このスケート人生を思いっきり楽しめるように、あと数年、自分が「あの時、頑張って良かった!」と思えるようにしたいですよね。今は「全力で、最後まで駆け抜ける!」と思っています。

-GPシリーズで初めて表彰台に立てず、全日本選手権6位だった昨季は

坂本 勝手に自分で周りをライバル視してしまっていて…。本来の自分が全然見えていない状態でした。ジュニアの時は何も考えていなくて。ステップが最後の方にあるんですけれど、ステップの途中に「あっ、何で自分滑ってるんだろう」となるぐらい、何も考えていなかったんです。意識がどこかに飛んでいる状態ですよね。(平昌)五輪シーズンもジュニア上がりで一番下っ端でしたし「できるだけやろう」という感じで。結果的に五輪に行かせてもらえて、次の年(18-19年シーズン)は「五輪選手として、恥ずかしくない演技をしないと」という気持ちだけでした。結果は結構良かったんですけれど、いざ昨季になると「今年は何を目標にしたらいいのか?」って、目標が曖昧になっていました。

-国内外にトリプルアクセル(3回転半)や、4回転ジャンプを跳ぶ選手が出てきた

坂本 「この状況で勝つのは難しいな」と自分で思いこんでしまって、まず気持ちがやられていました。何に向かってやればいいのか分からないし「どうしよう、どうしよう」と考えている間に試合が来て「あぁ、ダメだった…」の繰り返し。昨季はさらっと終わってしまいました。

-意識は紀平梨花(トヨタ自動車)といった国内、あるいはロシア勢ら海外、どちらに向いていたか

坂本 梨花ちゃんも、ロシアの子たちも含めて、自分が跳べている以上のものを跳んでいる人たち全員ですね。「この子たちに勝てるのかな…」という感じで。(全日本女王となった18-19年は)自分の中で上出来なジャンプを「ノーミスでそろえて、勝つ」ということだけを考えていたので、1つ1つの質も上がっていました。昨季は「勝たなきゃ、勝たなきゃ」と思うけれど、自分のやっていることが追いついていなくて、追いついていないどころか、どんどん質が下がっていました。それに全然、気づけていなかった。数字の計算もしてしまうし、モチベーションが全然上がっていなかったです。

-コロナ禍の自粛期間を経て、今季は

坂本 あともう1歩「パッとした成績」が残せていないな、という気持ちがあります。(過去に)全日本優勝とかもあるんですけれど「もうちょっと、何かできるやろう」みたいな感じで(笑い)。今はやる気MAXです! 「今年はやるか!」みたいなのが、ずっと続いています! 

◆坂本花織(さかもと・かおり)2000年(平12)4月9日、兵庫県神戸市生まれ。4歳でスケートを始める。17年3月の世界ジュニア選手権3位。同年12月の全日本選手権2位で2枠の平昌五輪代表入り。18年の五輪で6位入賞。同年12月の全日本選手権で初優勝。神戸野田高を経て、19年に神戸学院大へ入学。趣味は折り紙と手芸。今季のショートプログラム(SP)はリモートで振り付けを行った「バッハ・ア・ラ・ジャズ」、フリーは2季目の「マトリックス」。159センチ。