女子サーブルの江村美咲(24=立飛ホールディングス)が、男女を通じて日本勢初の2連覇を達成した。決勝でスピナ・ヨルヤドゥ(ギリシャ)に15-11で勝利。優勝は15年大会の男子フルーレ太田雄貴と昨年の自身と1度ずつあったが、日本フェンシング界に新たな歴史を刻んだ。1年後のパリ五輪に金メダル最有力候補として乗り込む。男子フルーレは松山恭助(26)が初の銅メダルに輝いた。
日本勢初の2連覇を決めた瞬間、万感の表情でひざまずいた。サプライズだった昨年のような涙はない。頂点を取りにいって取った勝ちにいって勝った江村が女王の重圧もはねのけた。「相手以上に自分と闘っている感覚の方が強かった。日本の歴史を新たに作れたこと、自分の弱さと闘い最後までやり切れたことがとてもうれしい」と喜んだ。
世界ランキング1位で迎えて6試合を突き抜けた。2回戦で高嶋理紗との日本人対決を制し、準決勝で過去未勝利の世界3位グクンドゥラ(ギリシャ)に15-14で逆転勝ち。決勝も世界4位のギリシャ選手を15-11で退けた。得意のロングアタックにピスト(競技コート)を広く使った新戦術が光る。「ここで勝てない人間が五輪で金メダルを取れるわけがない」。あえて自身を追い込み無双した。
初優勝した1年前のこの大会途中から左足甲を痛めていた。検査や衝撃波の治療を受けても効果なく、休んでも治らない。練習すると「やっぱり痛い…」日々が今年2月まで長引いた。先月は右上腕三頭筋を肉離れ。練習完全復帰は今月に入ってからだったが「試合前の不調な状態から挑んだ今大会は、昨年とはまた違う価値がある」と進化の糧にした。21年東京五輪の3回戦敗退後は燃え尽き症候群と向き合い、この1年は弱い自分を奮い立たせた。
パリ五輪1年前も世界一を守り、代表選考レースを独走。レジェンド太田も超える歴史を刻み、次に待つ「日本初」の称号は、夢でもある個人の五輪制覇だ。金メダル最有力候補として勇躍、フェンシング発祥国フランスへ。来夏、花の都で美しく咲く。【木下淳】
◆江村美咲(えむら・みさき)1998年(平10)11月20日、大分市生まれ。父宏二さんは88年ソウル五輪フルーレ代表。08年北京五輪では代表監督として太田を日本初の銀に導く。母孝枝さんもエペの世界選手権代表。小学3年で始め、JOCエリートアカデミー(大原学園高)から中大。16年リオ五輪は控え。東京五輪は団体5位。W杯とGPのメダル獲得数は7(金1銀3銅3)。21年4月に日本初のプロ宣言。立飛HDを筆頭に数社と契約、スポンサー費で競技に専念する。スポーツフードスペシャリストの資格あり。170センチ。右利き。血液型A。
◆フェンシング競技パリ五輪への道 今年4月3日から来年4月1日まで行われる五輪代表選考レース=W杯、GP、各大陸&世界選手権で獲得したポイントによって決まる。世界選手権で分配されるポイントはW杯の2倍と最も価値が高い。世界ランクも1位の江村は最速内定候補。団体出場枠の獲得有無で各国の出場選手数は変動する。本大会は24年7月27日から8月4日まで。1900年パリ万博の主会場だった美術館グラン・パレで行われる。


