B1仙台89ERSの前ヘッドコーチ・藤田弘輝氏(38)の3シーズンを振り返る。連載第3回は、3年目の23-24年シーズンです。
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藤田体制で臨む2年目のB1は、プレシーズンから違いが見えた。昨季の1試合平均73・2得点はリーグ最下位。だが、23年9月の東北カップでは、決勝の秋田戦で出場選手全員が2ゴール以上、うち5人が2ケタ得点で、18年以来2度目の優勝。課題だった得点力不足克服の兆しが見えた。
22-23年シーズンを終え、藤田氏は「もっとトランジション(攻守の切り替え)を来季は出していきたい」と語った。明確な構想のもと、今季は阿部諒(29)ヤン・ジェミン(24)ヴォーディミル・ゲルン(30)らが加わり「彼らが持つバスケットの価値観と仙台が持っている価値観が非常に近い印象がある」。3人とも存在感を示した。中でも、阿部諒は昨季在籍した島根での1試合平均3・8得点から14・6得点と役割を全う。得点以外でも軒並みキャリアハイを更新した。
ディフェンス面でも昨季とは異なる要素があった。藤田氏は「ディフェンスの強度を高く保ち、40分間ハードに戦い続ける」という哲学を掲げ、相手をイメージすることを重視する。「オフェンスが表現できないとディフェンスの練習にならない」と、自ら練習で千葉Jの富樫勇樹(30)役を担うこともあった。練習生の猪狩渉(28)も富樫や横浜BCの河村勇輝(23)といった日本を代表するPG役を担い、チームを助けた。千葉Jから2勝、横浜BCからは1勝と、見える部分、見えない部分で、今季加わった新たなピースが躍動した。
群馬との今季最終戦は、98-79で勝利。今季最多得点で締めくくった。1試合平均79・3得点は、B124チーム中12位だった。課題だった得点力は向上し、堅守も健在。藤田氏は「ナイナーズらしいディフェンスとオフェンスで今シーズン最後の試合を終えられたことがすごくうれしい。本当にハードワークするチームで、誰1人『自分が』っていう人がいない。本当に全員が、チームがどう良くなるかを考え続けられる。だからこそ今シーズン、ビッグクラブに勝てた」と振り返った。積み上げてきた「仙台89ERSのバスケット」の集大成だった。
目標の「30勝」には届かなかったが、27勝でクラブのB1最高勝率を記録した。チャンピオンシップ(CS)決勝を戦った広島や琉球からも勝ち星を挙げた。もう1つ、誇れる数字がある。クラブ史上初の「ホーム全試合満員御礼」。30試合で延べ13万1194人が“黄援”に駆けつけた。
ブースターの後押しは、強豪クラブを退ける要因の1つになったはず。私はシーズン開幕前から、その熱を感じる機会があった。東北カップを取材後、立ち寄った東北自動車道の国見SAで「今季は違う」と確信した。旅の思い出を記す雑記帳に見つけた。
「東北カップ 仙台89ERS優勝おめでとう」
「東北カップ5年ぶりに89ERS優勝!! ヤッター」
「仙台さん優勝おめでとう! ハピネッツ準優勝おめでとう! 来年はリベンジー!!」
仙台ブースターだけでなく、決勝を戦った秋田ブースターからも祝福が記されていた。「30勝」やその先のCS出場、リーグ優勝をブースターの誰もが信じていた。それが「ホーム全試合満員御礼」につながった。藤田氏は、来季から指揮を執る落合嘉郎氏(41)に「任せたよ」と声をかけたという。ブースターの思いは新体制に託された。【濱本神威】(おわり)


