【第48回】
「学校が好き」でも不登校は起こる
慢性疲労症候群(2)
「夜間の体温の上昇、睡眠リズムの逆転、手足の血流の低下、前頭葉や脳下垂体の疲労…不登校の子どもたちの体には、慢性疲労症候群によく似た特異な変化が起こっています」と話すのは熊本大病院小児発達科教授の三池輝久医師だ。
三池医師は20年前から、朝起きられない、おなかや頭が痛いといって不登校になっている多くの子どもたちを診察してきた。不登校は、いじめや人間関係、家庭環境などのストレスによる精神的な問題と考えられがちだが、ごく平凡な家庭で育ち、「学校が楽しくて好きだ」という子にもこの症状が起きていることに三池医師は注目した。
三池医師らのチームは、子どもたちの脳機能を中心に検査をしてデータを蓄積した結果、多くの子どもたちの脳が大変な疲労状態にあるために、集中力や記憶力が低下したり、手足の血流が悪くなり、睡眠のリズムが逆転し、抑うつ状態となるなど、生命をつかさどる部分の機能がダメージを受けていることを発見した。さらに不登校の原因となる体の不調が、風邪などの感染症にかかったことをきっかけに起きることが多いことから、免疫系統にも異常が起きていて、感染症にかかりやすい状態になっていることも分かってきた。「子どもたちは、だるい、疲れる、リンパ節が痛い、微熱があるなどの風邪のような症状を訴えますが、その疲労感は想像を絶するつらさなのです」。
もし以下のような症状があったら、不登校ではなくとも、信頼できる小児科医に相談し、睡眠時間や食生活など、子どもの生活サイクルを見直し、整えることを考えよう。
◆小児慢性疲労症候群チェックポイント
<1>新しいことを記憶する力や意欲がわかず勉強が手につかない。
<2>就寝時間が遅くなる。不眠、夜中に目が覚める。朝起きられない。
<3>わずかな労作でも非常に疲れ、休んでも疲れがとれない。
<4>頭痛や頭が重たい感じがある。
<5>のどの痛みがある。
<6>首や脇の下のリンパ節が痛い。
<7>筋肉や骨格が痛い。
<8>腹痛や吐き気がある。
<9>いつも微熱がある。
<10>めまいがある。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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