昨年末のドーピング検査により陽性反応が出たROC(ロシア・オリンピック委員会)のカミラ・ワリエワ(15)が、82・16点で首位に立った。

ワリエワは昨年末のドーピング検査で陽性反応が出たものの、スポーツ仲裁裁判所(CAS)から個人戦出場を認める裁定が下された。国際オリンピック委員会(IOC)はワリエワが3位以内に入った場合はメダル授与式を実施しないと発表し、前代未聞の混乱が続いていた。

日本勢は坂本花織(21=シスメックス)が自己ベストの79・84点で3位に入った。樋口新葉(21=明大)は73・51点で5位、河辺愛菜(17=木下アカデミー)は62・69点で15位だった。

アンナ・シェルバコワ(ROC)が80・20で2位、アレクサンドラ・トルサワ(ROC)が74・60点で4位だった。

【フィギュア】女子SPライブ速報

乱れた。一気に金メダル候補に駆け上がった今季では見たことがないようなジャンプだった。

冒頭の3回転半ジャンプは両手を上げる、他に誰もまねできない大技。その着氷でステップアウト。誰もが精神的な影響を感じざるを得ない瞬間だった。

その後のジャンプなどの要素は滑り抜いた。フィニッシュポーズを解くと、込み上げたように顔を両手で覆った。得点は自己記録の世界最高点から約8点低い82・16点。会場では18年平昌五輪金のザギトワ、銀のメドベージェワらが旗を振って応援した。最終組の6分間練習で紹介を受けると、会場からは拍手が起きた。氷の上には非難の声は届いてはいなかった。

この1週間、北京五輪で最も注目された選手になっていた。13日には7時間にも及ぶ公聴会に出席もした。この日は、祖父が使っている心臓病の薬を誤って摂取したと主張していることが報じられた。真相は明らかになっていない。ロシアメディアには「コーチも周囲全体も私を支えてくれる。親しい人は決して私から離れません。幸せですが、同時に精神的に疲れています。幸福の涙と少しの悲しみがある」と答えていた。

輝かしい未来が約束されていたはずだった。個人戦に先駆けて4日から行われた団体ではSPとフリーに出場。初舞台でも堂々の演技でともに1位。2位以下を大きく引き離し、ROCの金メダルに貢献し、個人戦での戴冠も予見させた。

メダリスト会見では「3歳から五輪チャンピオンになりたいと母に言っていました」「(フリーの2本目の4回転で転倒し)良くなかったけれど、これから頑張ります。信じてください。重荷、責任を感じます」と語っていた。その翌日から、渦中の人物になった。

演技後には取材エリアを通常とは違う動線で無言で通過、上位3人による会見も欠席した。3位までに入ってもメダル授与式は行わない決定がされている。フリーではどんな結末を迎えるだろうか。【阿部健吾】

◆ワリエワ騒動の経緯 昨年12月25日に五輪代表選考に関わるロシア選手権で検体を採取。ワリエワが団体金メダルを獲得した翌日の今月8日に禁止薬物トリメタジジン検出を通知。即時の暫定資格停止処分となったが、ワリエワ側がロシア反ドーピング機関に異議を申し立て、9日夜に処分解除が決まった。これを不服として、国際オリンピック委員会と世界反ドーピング機関がスポーツ仲裁裁判所に提訴。女子SP前日の14日に同裁判所は提訴を却下して五輪出場を認めた。