来月4日開幕の北京五輪に初出場するフィギュアスケート男子の鍵山優真(18=オリエンタルバイオ/星槎)が、夢舞台へ挑む心得を授かった。昨夏の東京五輪卓球男子団体で銅メダルを獲得した張本智和(18=木下グループ)との同学年対談が実現。2003年(平15)生まれを代表する夏冬のトップアスリート2人が五輪、父、オフなど語り合い、エールを胸に鍵山は北京へ向かう。日刊スポーツでは本日から開幕まで、特集「Nikkan Olympic ONE」を先行10回連載。その第1回としてお届けする。【取材・構成=木下淳、三須一紀】

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張本から出た「五輪」の言葉で、本題へ入る。コロナ禍の第6波という状況を鑑みリモートで行った難しい設定の対談でも、大舞台の話になると熱を帯びた。

鍵山 フィギュアスケートにも団体戦があるんですけど、やっぱり夏の五輪の団体戦は熱いなと思いながら卓球を見ていました。(張本は)すごかったです。

対する張本は「不安や緊張が強かった」と打ち明けた。自国開催で、第3シードで金メダルも期待された個人戦。まさかの4回戦でスロベニア選手に敗れた。

張本 シングルスでもメダルを取らなきゃいけないという気持ちが強くて、振り返れば、それが良くなかった。今までメダルを取った時って、あまりそういうことを考えてなかったんです。自分のプレーをどうすればいいのか。それだけ考えれば、もっと緊張せずにプレーできたのかなって。

鍵山 (大きくうなずき)試合の怖さというか、僕も今季何度も失敗してきました。自分の課題でもあるんですけど、メンタルをどう保てばいいのか。分からなくなったりしますよね。

張本 五輪前、いろんな方から『特別な舞台だよ』『4年に1度を大事に』とか言われたんですけど、いざ終われば、周囲の盛り上がりはすごかったけどコート自体は普段の試合と変わらなかった。ちょっと特別だと思い過ぎたなって思いが今はあります。いろんな方が大きな舞台ほど声をかけてくれますけど、いつものツアーと同じ気持ちで戦えば良かった。教訓です。

鍵山 本当にありがたいです。自分もそういう感じで頑張りたいと思います。

失意の個人戦の後、張本は切り替えて団体戦へ。登場したゲームは全勝で日本男子を銅メダルに導いた。

張本 吹っ切れたことが一番です。あれこれ考えているうちに五輪が終わってしまうと思ったので、もう本当にやりたいことをやるだけだ、思い残すことなく東京五輪を終えたい、って気持ちになって。結果、準決勝、3位決定戦と伸び伸びプレーできた。その状態を最初からつくる難しさを感じつつ、でも1回は負けないと生まれないメンタルでもあって。50%ずつ、いい思いも悪い思いもした五輪でした。勝たなきゃ勝たなきゃ、メダルを取ろう、と結果のことだけ考え過ぎてしまった。特に今回、日本の選手が毎日メダルを取って、日に日に自分も取らなきゃという気持ちが強まって。ほぼ2週間、苦しかったです。でも結局、今まで自分がメダルを取れた時って、そういうことを考えていなくて。結果より、どう自分のプレーをするか内容を考えた方が良かった。

初出場となる北京五輪を来月に控え、心に刺さるアドバイスの数々。鍵山は思わず笑顔になって「ありがたい」と感謝し、続けた。

鍵山 僕も4大陸選手権(16歳だった20年、シニア主要国際大会デビュー戦で3位)とか、世界選手権とか、あまり結果を求めてない時に限って、いい演技をしてメダルを取れたことが多かったんです。北京で完璧に演技できるか心配だったんですけど、やっぱり考えて不安になっても、もったいない。ポジティブに自分のプレーに集中したい。

2月4、6日の団体戦に起用される可能性があり、出場すれば8、10日の個人戦へ連戦。時に切り替えも必要となるかもしれない。

鍵山 まだ分からないですけど、団体戦に出ることになれば、ユース五輪で経験したこと(個人、混合団体ともに金メダル)だったり、今回オリンピアンの張本選手から聞いてタメになった話だったりを生かしたい。1分1秒を楽しんで、レベルアップした自分を見せられるよう頑張りたい。