5大会連続出場の渡部暁斗(33=北野建設)が日本人トップの7位と粘った。

2大会連続で銀メダルを獲得している得意種目。前半飛躍は98メートル。首位の山本涼太(長野日野自動車)に1分16秒差の9位で、後半の距離(10キロ)に臨んだ。前半を終えた渡部は「まだメダルの可能性がなくなったわけではない」と前向きに話して臨んだクロスカントリーで、五輪5回目のベテランが意地見せた。着実に前を追いかけ、最後の4周目で前を行く選手を抜いて入賞を果たした。

渡部暁は「金メダルを取ったガイガー(ドイツ)は一緒に走っていた選手なので、もう少し体力を残せていたらというか、うまく走っていたらメダルはあったなという悔しさがあります。でもジャンプの悪さからすれば、いい走りをして終えられたと思います」と話した。

今季は苦戦している。W杯では個人総合10位で最高は5位1度。直前の試合ではワースト25位だった。表彰台に立てておらず、焦りがあった。前日8日の公式練習では「若干緊張している。ここ(中国)に来て出していないジャンプを出さないといけない」と、復調を信じて臨む状況だった。

上位勢が新型コロナウイルスの影響で不在の試合だった。今季W杯8勝の金メダル候補、リーベル(ノルウェー)や3連覇を狙ったフレンツェル(ドイツ)ら今季のトップ7のうち4選手が陽性判定により欠場した。ライバルたちとのメダル争いはかなわなかったが、渡部暁は「誰がいるいない以前に自分がいい状態じゃないってところが今一番の悩みなので、誰がいようと自分のベストパフォーマンスってものを求めていかないとどうにもならない」と、自身にのみ集中していた。

悲願達成だけを目指し5大会目に臨んでいる。2個の銀メダルを持ち、五輪の金メダルへの挑戦を登山に例える。「山みたいなもの。登ったことがないから行ってみたい。何度かチャレンジしているけど、山頂手前までしか登ることができていない」。見たことがない景色を見ようと歩みを進めている。

15日にはラージヒルの個人戦に臨む。「まずはかなり苦戦しているジャンプを」。日本の第一人者として、集大成と位置付ける大会での頂点を見据える。【保坂果那】