五輪5度出場の日本のエース、渡部暁斗(33=北野建設)が銅メダルを獲得した。冬季の3大会連続メダル獲得は日本勢で2人目。し烈なデッドヒートを制し、ヨルゲン・ゴローバク(ノルウェー)が金メダル。渡部暁とは0・6秒差という僅差だった。これで日本のメダル数は14個となり、冬季では前回平昌大会の13個を上回る史上最多となった。

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渡部暁は前半のジャンプは135・0メートルを飛び、126・4点で5位。首位とは54秒差に付けた。9日の個人ノーマルヒルを逆転で制したガイガー(ドイツ)や、銀メダルに輝いたグローバク(ノルウェー)を警戒していた。前半の飛躍でリードして後半に粘り勝つ。これがゲームプランだった。

氷点下20度まで下がり、後半のクロスカントリー(10キロ)は30分開始時間が早まった。ガイガーとは1分31秒差、グローバクとは1分22秒差のリードでスタート。持ち前の積極的な走りを見せた。懸命に先行する選手を追い、1周目を過ぎる頃に2位まで浮上。2周目で先頭のリーベル(ノルウェー)を抜き、首位に立った。ラスト4周目に向かう時は4番手だった。リーベルが遅れ、優勝争いは3人に絞られた。先頭に立ち、ラスト必死に粘ったが2人にかわされた。それでも3位は死守した。

W杯で上位のフレンツェル(ドイツ)らが欠場。ただ、ライバルたちより調子が上がらない自身との闘いだった。14年ソチ、18年平昌と2大会連続で先に実施されるノーマルヒルで銀メダルを獲得した後、ラージヒルではソチ6位、18年平昌5位とメダルを逃した。今回はノーマルヒル7位。流れが違う。「もう1回気を引き締めろってとこですかね」と受け止め、強い気持ちで臨んだ試合だった。

「今までのように向かうのは最後と思っている」。長男が誕生し、人生観が変わった。集大成と位置付けた五輪で最後の個人種目。これまで100%、時間もパワーも競技に注いできた。節目と見据え、全力でぶつかった。

金メダルを公言して臨んだ大会。最後の最後まで金メダルを追い求め、必死に滑走した。渡部暁の生き様がにじんだレース、その集大成とも言える北京五輪でメダルを手にした。