2大会連続銀メダルの平野歩夢(TOKIOインカラミ)が悲願の金メダルに輝いた。3回目に96・00をマークし、スコット・ジェームズ(オーストラリア)を逆転した。弟の平野海祝(かいしゅう、19=日大)は75・50で9位、戸塚優斗(ヨネックス)は69・75で10位、平野流佳(太成学院大)は転倒もあり13・00で12位。最後の五輪となったショーン・ホワイト(米国)は85・00で4位だった。

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決勝1回目、予選では温存していたトリプルコーク1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)を鮮やかに決めた。その最後のトリックで転倒し、33・75で9位となったが、金メダルへ1回目から攻めた。2回目にもトリプルコーク1440を決めるなど、最高難度のトリックを連発。91・75で2位に浮上した。

3回目、92・50でトップのジェースムを逆転しようと果敢に攻めた。2回目と同じルーティンを完璧にこなし、大逆転した。

「競技場のスペックを超えた技」というトリプルコーク。昨年12月のデュー・ツアーで、世界で初めて成功させ、今年1月のXゲームでも再び成功。平野歩夢の代名詞となりつつある大技を、五輪の舞台でも刻んだ。

Xゲーム終了後は、米国に1週間残ってジャンプ練習施設でみっちり最終調整。「異常なぐらい練習していた」と表現したように、多いときには1日69本ものジャンプを飛び続けた。練習時間は約3時間半。村上コーチは通常なら30本程度が限界と説明。スノーモービルで出発点に移動していたそうで、「最後は歩夢よりも、スノーモービルの運転手が疲れ切っていた」と振り返る。

猛特訓の効果は北京入り後にはっきり表れた。8日の公式練習では、3本打ったトリプルコークの着地にすべて成功。平野歩は「あの時間が今のメーク率につながっている」と自信を深め、村上コーチは「順調すぎるぐらい。完全に万全の状態」と太鼓判を押していた。

スノーボードとスケートボードとの二刀流で、昨夏の東京五輪では日本選手5人目の夏冬五輪出場を果たした。コロナ禍による東京五輪1年延期の影響で、北京五輪への準備期間はわずか半年。「1日1日を無駄にできない。そんな期間しか僕には残されていない」と覚悟を決め、限られた時間を最大限に活用した。

14年ソチ五輪、18年平昌五輪と連続銀メダル。あと一歩のところで逃した頂点を、ついにつかみ取った。 【奥岡幹浩】

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◆トルプルコーク1440 斜め軸に縦3回転、横4回転する大技。技名にある「トリプル」は縦に3回転することを指す。「コーク」とはコルクスクリューの略で、コルク用の栓抜きのように、らせん状に渦を巻く回転形式であることに由来。1440は回転数(360×4)を意味する。昨年12月のデュー・ツアーで、平野歩夢が公式戦では世界で初めて成功させた。