まさかの10位だった小平奈緒(35=相沢病院)がレース後、先月中旬に右足首を捻挫していたことを明らかにした。13日の500メートルに続き、この種目を全うした後に「ちょっと…あの、終わるまでは言えなかったんですけれど…。1カ月前に、右の足首を捻挫しまして」と涙声で告白した。

1月15日ごろの出来事といい「1週間、氷から離れて…。そこから靴を履いてみたんですけど、全く滑れない状況で北京に入りまして。1月の後半の2週間は自分の中でもかなり絶望的だった」と打ち明けた。

「皆さん、うすうす気付いていたかと思うんですけど、北京に来てから左ばかりでスタートしていて。右足で全く踏ん張ることができませんでした」

大雪の日、練習に向かう道で滑って痛めたという。「道路を歩いていて普通に滑ってしまって」「ああ、やってしまったなと」。不運だった。調子が上がり、手応えが増してきた期間だけに悔しさが募る。「そこからは絶望の日々を送っていました」と振り返った。

そして、再び涙声を絞り出した。

「4年間が台無しになってしまったなと。つらかったです」

それでも、前回は500メートルで金メダル、この1000メートルで銀メダルを獲得した栄光の舞台、いざ五輪に突入すると光が見えてきた。

「トライアルの日、たまたま男子のスタートを見ていて『あ、このスタートだったら、もしかしたら右で構えられるかもしれない』と。500メートル、そこそこ滑れたので」

しかし、狂った歯車が戻るほど甘くないのも五輪だった。「そのままいけるかなと思ったんですけど、なかなか簡単には体がついてこなくて。一瞬、希望も見えたんですけれども、そんなに簡単にはいかなかったな」と肩を落とした。

今回は1分15秒65で10位だった。試合後は涙を流した。「痛みとやるせなさが目から出てしまった」。ただ、諦めなかった自分は褒めてあげたい。

「間に合わないと思ったんですけど、本当に力が入らなかったんですけど、不格好な作品にはなってしまったんですけど、自分なりの、まさに今を乗り越える滑りはできたのかな。奇跡を望んでいた部分もあったんですけど、五輪って、そういう舞台じゃないですよね」と認めつつ、生きざまは見せられた。

「まだ、やめられないね?」との質問も出た。「そのあたりも所属先とかスポンサーの皆さんと相談したい」と返した上で続けた。「もう1度、地元で。体に痛みがない状態で、ノビノビと滑れたらいいなあっていう未来像は描いています」。【三須一紀、木下淳】