33競技339種目―、史上最多の戦いが、東京で繰り広げられる。国際オリンピック委員会(IOC)は先月9日、新たに追加された種目を含む全実施種目を発表。開催都市提案の追加種目を含めて過去最多を更新し、163種目だった64年東京大会の倍以上になった。急増のカギは「若者人気」「男女平等」「都会的」。五輪は、20年東京大会を契機に新しい時代に突入する。


理想半々へ6種目混合


 柔道の混合団体、陸上や競泳の混合リレー、卓球の混合ダブルス―。6月9日に新たに加わった16種目のうち、6種目が「男女混合種目」だった。さらに、カヌーや重量挙げなどで男女の種目数を同じにするように変更。IOCが14年12月に発表した中長期計画「アジェンダ2020」の提言「男女平等を推進する」が明確に種目に表れた。

 64年の東京大会では、全選手数5151人のうち女子は678人しかいなかった。全体の13・2%、8人に1人だった。20年大会は48・8%になる見込み。IOCが目標とする「女子の参加数50%」に限りなく近づく。世界選手権で男女別の団体戦を実施していた柔道は、あえて混合団体で種目追加を申請。国際柔道連盟の山下泰裕理事は「IOCの意向に沿って、入りやすい種目にした」と説明した。東京大会は「男女混合大会」のスタートになる。


卓球混合ダブルスの石川佳純(左)と吉村真晴組
卓球混合ダブルスの石川佳純(左)と吉村真晴組

「若者人気」でストリート系採用


 自転車BMXのフリースタイル、バスケットボールの3人制、これまで五輪とは無縁だった種目が次々と加わった。開催都市提案の追加種目を選定する段階からキーワードとなっていた「若者人気」。ストリート系と呼ばれる種目の実施は、サーフィンやスケートボード、スポーツクライミングの採用と同じだ。これまで五輪になじまなかった種目が、若者を意識した東京大会で一気に増える。

 IOCは若年層の「五輪離れ」に危機感を募らせている。米国でテレビ放送権を持つNBCの大会平均視聴率は、ロンドンの17・5%からリオデジャネイロは14・9%に下落。顕著なのは、18~34歳の視聴率の低迷。IOC調整委員会のコーツ委員長は「若者の参画を促す大会」と東京大会を評したが、若者に見てもらわなければ、五輪の存在が危うくなる事態に陥っている。


スケートボード・女子ストリートでダイナミックな演技を披露する西村碧莉
スケートボード・女子ストリートでダイナミックな演技を披露する西村碧莉

 IOCが「若者向き」とともに連呼するキーワードに「都会的」がある。新種目として加わったバスケットボールの3人制とBMXフリースタイルが異質なのは「見る」よりも「やる」スポーツだということ。従来の「競技」ではなく「遊び」にも近い。スケートボードやスポーツクライミングも同じ。都会の公園で気軽に体を動かす。そんなイメージが「都会的」な追加種目、新種目にはある。

 6月28日にIOC調整委員会はスケートボードやクライミングの会場となる青海(あおみ)アーバンスポーツ会場を視察した。コーツ委員長が、構想として明かしたのが「会場の一般開放」。競技時間以外は子どもたちに施設を開放し、競技体験をしてもらうというのだ。いわば五輪が提供する「遊び場」。多くの人が集まる都会で五輪に直接触れる。これも、将来の五輪の姿かもしれない。【荻島弘一】


自転車BMXフリースタイルの中村輪夢
自転車BMXフリースタイルの中村輪夢

 ◆男女混合種目 64年大会では、セーリングと馬術が男女関係なく行われた。今も馬術は男女の区別がなく、セーリングも男女を問わない種目が残るが、これは男女で力が大きく違わないから。しかし、20年大会では力の差がある男女が一緒に戦う種目が増加。競泳の混合リレーなどは、男女をどう配置するかも勝負のカギを握るといわれる。


 ◆Xゲーム化? 20年大会で目立つのは「エクストリーム(X)スポーツ」の急増。音楽やファッションと融合し「アクションスポーツ」とも呼ばれる。スケートボードとBMXフリースタイルは「Xゲーム」の正式種目。サーフィンとスポーツクライミングも同大会で行われていた。冬季大会のスノーボードやフリースタイルスキーと同様に夏季大会でも今後増える可能性がある。いずれは極限状態の場所でアイロンを掛ける「エクストリーム・アイロン掛け」が五輪に入るかも。


◆64年東京→20年東京の競技数変化

 64年大会は陸上、水泳など20競技、20年大会は開催国提案の追加も含めて33競技になるため、種目数同様に大幅増。アーチェリー、卓球など今では定着した五輪競技も、当時はなかった。競技数は少しずつ増え続け、16年リオデジャネイロ大会でゴルフとラグビーが加わって28。20年東京大会は開催国提案の追加として5競技が増える。


◆64年大会から減った種目

 競技ごとに見れば種目数が減ったものはない。ただ、女子種目の増加にともなって減らされた男子種目はある。レスリングはフリー、グレコとも8階級だったが、現在は女子6階級が増えたために男子は各6階級まで削減。ボクシングも女子の採用で10階級が8階級になった。柔道は当時の4階級が現在は7階級。無差別級は84年ロサンゼルス大会を最後に消滅した。

(2017年7月5日付本紙掲載)