2020年東京五輪開幕まで今月24日で残り3年となる。14年7月23日の開始から毎週水曜日に掲載してきた日刊スポーツの「東京五輪・パラリンピック特集」も155回目となり折り返し地点を迎えた。初回に登場したビートたけし(70)が3年ぶりに登場。会場、費用負担、新競技など問題点ばかりが目立ってしまったこの間、五輪を愛するたけしはあえて「オリンピックは末期状態」と厳しい言葉で活を入れた。

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 五輪よ、復活してくれ―。1964年10月10日、東京の空に描かれた五輪を見上げて震えたたけしは、心底思う。20年東京大会の招致決定から3年10カ月。もめ事ばかり注目され「平和の祭典」という原点に目が行かない。成熟国家が五輪を開催する意味を、国民がうまく捉えられずにいる。

 たけしは鋭い感性で五輪が「迷走」する理由を考察。会場整備費の高騰、開催自治体の費用負担などで混迷が続き「五輪がゼネコンをもうけさせるものになっている。田中角栄(元首相)がやったことと同じ」と残念そうに語った。

 国際オリンピック委員会(IOC)は14年12月、五輪を持続可能にするため開催都市の負担軽減などをうたった「アジェンダ2020」を採択。東京大会の総予算も高額とし、さらなる削減を求めている。一方で高い理想、高価な施設、高級感のある大会運営を強いて「利権を持つ欧州貴族がうまいことやって、金をもうける手段になってる」と矛盾と本質を見透かした。

 そんな中、2024年大会の立候補地が莫大(ばくだい)な経費を理由に次々と辞退。フランス・パリと米ロサンゼルスだけとなりIOCは9月までに24、28年大会の開催地を決め、両都市を割り振る。異例の事態に「やりたい所なくなるよ」と言い「元来ギリシャの五輪なんだから、毎回ギリシャでやればいい。会場も毎回造らなくていいし、聖火も運ばなくていい」と皮肉った。

 若者人気を取り込むため、東京大会ではスケートボード、サーフィンなどを新種目としたが、これにも違和感を覚える。いわゆる「横乗り系」には個々の文化があるとし、五輪文化に無理やりはめ込むことがナンセンスだという。

 2010年バンクーバー冬季五輪でスノーボード代表だった国母和宏を例に挙げた。選手団ユニホームを着崩して「腰パン」で登場し、批判を浴びたが「あれをかっこいいと思っている人たち。制服なんて着せちゃいけない。パンクロッカーが『クールファイブ』の格好をして歌っているようなもんだ」。

 1936年ベルリン五輪でヒトラーがナショナリズムに利用し「あれを見た世界が国力を見せつける場にした」。1984年ロス五輪では40代で組織委員長となった実業家ピーター・ユベロスが膨大な放送権料などで黒字化。商業五輪を確立し「金になるとなった」。この宿命から脱却できず〝選手不在〟のまま進む日本の五輪は「末期に近い」と嘆いた。


 世界的映画監督でもあり、組織委から開閉会式の演出家の誘いはあるか問われ「ねえよ。こんなことばっかり言ってるから」と笑ったが、ぶっきらぼうに「きれい事だけじゃ成功しない。開会式は戦争から見せるべきだ。おいらにやらせろってんだ」と本音が出る。たけしが参画すれば、東京五輪の何かが変わるはずだ。【荻島弘一、三須一紀】

(2017年7月19日付本紙掲載)