競技の奥深さや大会の見どころをスペシャリストに聞く「教えて○○さん」第6回はバドミントン。男子シングルス世界ランキング1位で、東京オリンピック(五輪)での活躍が期待される桃田賢斗(26=NTT東日本)はずばり、金メダルを取れるのか-。日本代表として五輪2大会出場の池田信太郎さん(40)が、桃田の現状やライバルたちとの力関係について、冷静な視点で分析した。【取材・構成=奥岡幹浩】
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-桃田は世界ランキング1位として東京五輪に臨む
池田 コロナ禍で国際大会が次々と延期や中止となり、試合数は非常に少ない状況です。ランキング1位のポジションにはいるけれど、定期的に試合があり、優勝を重ねて維持しているわけではありません。交通事故やコロナの前のランキングは連戦連勝を重ねて手にした正真正銘の世界1位。しかし今は、当時のポイントがそのまま反映された順位であり、本当の意味で世界1位とは言いづらい。
-復帰戦となった昨年暮れの全日本総合で優勝も、その後は今年3月の全英オープン(OP)に出場したのみ
池田 全日本総合は優勝したとはいえ、本来の彼らしいプレーは少なく、格下相手に手を焼くシーンも目立ちました。全英OPは準々決勝で、伸び盛りのリー・ジージャ(マレーシア)にストレート負け。状態はまだ途上段階で、世界レベルの相手を圧倒できるような状態ではありませんでした。
-交通事故によるブランクがあった影響も大きいか
池田 それは確実にあるでしょう。体の動きそのものは、事故前と変わらない水準に戻っています。ただショットの感覚は、実戦をこなす中で取り戻す部分も大きい。コロナ禍で実戦をこなせなかった影響は、他の選手に比べ大きいはず。
-桃田の長所や特徴は
池田 ひとつひとつのショットの精度が高いこと。野球でいえば、ストレートと同じ腕の振りから、カーブやフォークなどさまざまな球種を投げ分けるようなイメージです。対戦相手はどんなショットが来るか予測がつかず、対応が遅れます。他の選手よりスピードが格別に速いとか、フィジカル面でたけているわけではないけれど、相手を迷わせ、ラリーを支配することが桃田の特長です。
-五輪で桃田のライバルとなりそうな選手は
池田 全英OPで桃田を破ったリー・ジージャや、故障明けとはいえ、同様に攻撃力の高い石宇奇(中国)あたりでしょうか。まずはディフェンスから入る桃田に対し、それをぶち抜いてくるような相手が最大の脅威。ここ数年、直接対決で勝ったり負けたりを繰り返しているギンティン(インドネシア)にも警戒が必要です。いずれにせよ、混戦模様であることは間違いありません。
-世界ランキング2、3位のデンマーク勢は
池田 世界2位のアクセルセンも強い選手ですが、直接対決では桃田が14勝1敗と圧倒しています。世界3位アントンセンはプレーにムラっけがあり、いったん崩れるとずるずると行ってしまいがち。この2人の直後の4位にいる台湾の周天成はフィジカルの強さが売りですが、桃田に対しては守りを崩せずリズムを失うシーンが目立ちます。
-そうした中で、桃田が金メダルを取る確率は
池田 何かしらのメダルを取る確率は約80%はあると思います。金メダルを取る確率となると…難しいですが、あえていえば65%ぐらいかな。確実に言えるのは、初出場で金メダルを取ることは簡単ではないということ。五輪には独特の雰囲気があり、ものすごいプレッシャーがかかる。世界ランキング1位だから優勝できるという、そんな単純なものでは決してないし、だからこそ桃田が優勝したら、その意義は本当に大きい。
-優勝するためのカギとは
池田 受け身にならず、チャレンジャー精神を持つこと。だからこそ、全英OPで敗れたことは、挑戦者の気持ちを取り戻す上で重要な過程となるかもしれません。
■準決勝はアクセルセンか石宇奇が有力
東京五輪の1次リーグ組み合わせが8日に決まり、第1シードの桃田は世界ランキング38位の韓国選手、88位の米国選手と同じA組に入った。14組に分かれ、各組1位が決勝トーナメント(T)に進出。第2シードまでの選手が入った組は決勝T1回戦は免除され、準々決勝は伍家朗と対戦か。準決勝ではアクセルセンか石宇奇との対戦が有力。もう一方のブロックには、リー・ジージャ、ギンティン、アントンセン、周天成らが入る。
■桃田の激動5年間
16年4月 違法賭博問題が発覚し、無期限出場停止処分を受け、夏のリオデジャネイロ五輪を棒に振る。
17年5月 復帰戦となった日本ランキングサーキット大会優勝。
18年8月 世界選手権(中国・南京)男子シングルスで日本男子初の優勝。
9月 世界ランキングで日本勢初の男子シングルス1位になる。
19年3月 全英オープンで日本男子初の優勝。
8月 世界選手権(スイス・バーゼル)で日本男子初の連覇。
12月 全日本総合選手権2連覇。ワールドツアーファイナルで2度目の優勝。主要国際大会11勝目となり、のちにギネス認定。東京五輪代表も確実とする。
20年1月 遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれる。
2月 日本代表強化合宿に参加。練習で「シャトルが二重に見える」と訴え、病院で検査を受け、眼窩(がんか)底骨折と診断される。手術を受け、そのまま入院。
12月 復帰戦の全日本総合選手権で3連覇。
21年1月 タイ遠征出発直前、新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応。
3月 復帰後初の海外大会となる全英オープンに出場し、準々決勝敗退。
◆桃田賢斗(ももた・けんと)1994年(平6)9月1日、香川県三豊市生まれ。福島・富岡高3年の12年世界ジュニア選手権で日本人初の優勝。16年4月に発覚した違法賭博問題で1年間の出場停止に。復帰後、18年世界選手権で男子シングルス日本人初V。19年ワールドツアーで年間11勝(ギネス世界記録認定)を挙げて東京五輪出場を確実にした。20年1月、遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれるも、復帰戦の全日本総合選手権で3連覇達成。175センチ、68キロ。
◆池田信太郎(いけだ・しんたろう)1980年(昭55)12月27日、福岡県生まれ。筑波大から日本ユニシスに入り、坂本修一とペアを組み07年世界選手権で日本男子初の銅メダル。08年北京五輪に出場。09年に日本人初のプロ選手となる。12年ロンドン五輪は潮田玲子とのペアで混合ダブルス出場。15年引退。現在は東京五輪パラリンピック組織委員会アスリート委員会WG2リーダーや、フライシュマン・ヒラード・ジャパン社のシニアコンサルタントとして活動。
(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「東京五輪がやってくる」)











