<プロレスラー 蝶野正洋(53)>

 リオデジャネイロ五輪の前にドーピング問題が大きな話題になったけど、この問題はなかなかなくならないと思う。検査を厳格にやっても、必ずそれを上回る技術が研究され、検査に陽性が出ないような薬が開発される。いたちごっこなんだよ。

 だったら、乱暴な言い方だけど、いっそのこと、五輪競技をドーピング組と、ドーピングなし組に分けてやってみればいい。薬を使った選手が、何もやっていない選手と実際にどれぐらい記録が違うのか。とことんやらせてみればいいじゃないか。ただ、ドーピング仲間の中で勝っても、誰も感動しないだろうし、すごいとも思ってくれないよね(笑い)。

 20年東京五輪は、今からワクワクしているよ。五輪というのは、海外でやっていると、日本人の選手が出た競技はテレビでも取り上げられてみんな見るけど、それ以外はまず見る機会がない。東京でやるっていうことは、初めて均等に五輪競技をみんなが楽しめるってことだと思う。

 個人的には、高校までサッカーをやっていたんで、最近まで自分の中では五輪よりW杯だった。68年にメキシコで日本が3位になったことを伝説として聞いている世代なんだ。だから、東京では金メダルを取ってほしいね。

 それと、海外の人と接して感じるのは、外国の人たちが日本を格闘技の国としてとらえていること。日本の武道は、畏怖の念を込めて見られている。だから、東京五輪は、今後100年を見据えて、日本文化である日本武道をきちんと世界に発信する重要なポイントだと思う。スポーツ競技の大会だけど、日本文化をアピールする場でもあると思うんだ。

 柔道で金メダルを取れれば、東京五輪は絶対に締まると思う。柔道は、日本の国技として世界に広まったスポーツ。柔道も他団体と同じように強化をしているが、あらためて柔道の強化を考えてほしい。この4年間に、国家的プロジェクトであらゆる競技の中から可能性ある若者を発掘する。相撲でも、他のスポーツでも可能性のある選手に柔道をやらせてほしい。

(2016年11月9日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。