階級制の競技には柔道やレスリング、ボクシングなどがありますが、重量挙げって五輪の階級制競技の中で唯一、対人スポーツじゃないんですよ。柔道なら相手も減量に苦しんだり、それが勝敗を分ける。でも、重量挙げの相手は100キロは100キロのまま。向こうは減量してくれない。だから、体調を整え、100%の力を出すのがこの競技の難しさです。僕はアテネ五輪の時はサウナに6時間はいましたね。

 五輪に出て、1つだけ後悔があるとすれば「五輪に出場して満足してしまった」こと。アテネは日本勢のメダルラッシュでしたが、僕は出て満足してしまった。だから、結果がついてこなかったと思うんです。昨年、リオ五輪62キロ級に高校の後輩(中山陽介選手)が出たんですが、五輪前に会えなかった。会っていたら「出ることに満足せず、もっと結果を求めろ ! 」って言うつもりでした。大会後に会えましたが、もっと早くこの話ができていたら結果(12位)が違ったかもって。

 自転車との出合いは、アテネ五輪後に、先輩がトレーナーとして自転車選手を見ていたことがきっかけです。重量挙げを続けたくても、先がないというか、やっぱり食っていけない。北京を目指して階級を上げても伸び悩んで…。それで思ったんです。「夏季と冬季2大会出た人はいるけど、夏季五輪を違う種目で出た人はそういない」って。自転車始める前はなんとでも言えますよね。乗ってみたら全然別物でしたよ。

 ただ、ウエートトレーニングと自転車ってすごく関係が深いんです。最近なら自転車のナショナルチーム勢がウエートトレの効果で成績を伸ばしているし、競輪に参加する外国人選手も「ウエートをやらないなんておかしい」と言います。僕は競輪に転向後、師匠にウエートから離れるよう指導されました。当時は自転車の下地ができていなかったからです。今後はウエートトレもどんどん取り入れて、A級からS級に戻りたい。このまま終わるつもりはないです。

 東京五輪は大きな声援もあるし、いつも以上の力が出るでしょうね。僕がまだ競技者だったら、やっぱり「出たい ! 」と思うでしょうね。そのときは「出るだけに満足」と思わないようにしたいです。


(2017年11月15日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。