20年東京パラリンピックへ向けたデモンストレーションとして、世界トップクラスの義足スプリンターたちが来月5日に東京・渋谷に集結し、男子60メートルの世界記録に挑戦することになった。国内大手の電気メーカー、ソニーは13日、渋谷の路上でのストリート陸上の企画を発表し、これにT44(片足下腿=かたい=義足)クラスの60メートルと100メートルの世界記録保持者のリチャード・ブラウン(26=米国)や、今夏にロンドンで行われた世界選手権で200メートルの金メダリストのジャリッド・ウォレス(27=米国)らが出場することになった。

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 義足の進化とともに注目度が高まるパラ陸上が、3年後の東京に向けた大胆な企画が明らかになった。

 来月3日から5日に渋谷駅周辺で開催される「渋谷芸術祭」において5日午後、ソニーの協賛で「渋谷シティゲームス~世界への挑戦」と題した陸上大会が実施されることになった。渋谷のど真ん中、多くの人が行き交う神南1丁目交差点~神南郵便局区間の「ファイヤー通り」を封鎖し、ここに陸上トラックを敷く。そして東京パラリンピックでの表彰台が期待されるT44の世界トップレベルの3選手を招待した。

 15年世界選手権で100メートルと200メートルの2冠に輝いたブラウンは、100メートルで10秒61の世界記録保持者。今回は60メートルで自身が持つ6秒99の世界記録に挑戦することになった。さらにウォレス(27=米国)、昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックの100メートルで銅メダルを獲得したフェリックス・シュトレング(22=ドイツ)も加わり、世界トップ選手が渋谷を舞台にしのぎを削ることになった。

 今回行われる60メートルは欧州の室内大会で盛んな種目だが、五輪や世界選手権では行われていない。また「ストリート開催」というエキシビションゆえ、今回の記録は非公式になる。それでも関係者は「3年後の東京パラリンピックに向けて、世界のトップ選手たちがどれだけすごいか、実際に見てもらいたい」と今回に至った経緯を口にする。

 実際にハイテク化した義足の進化は止まらない。ウサイン・ボルトが持つ100メートルの世界記録は9秒53。ブラウンの10秒61(T44)とは1秒以上違うが、この20年で健常者と障がい者の世界記録の差は1秒以上も縮まっている。20年東京五輪・パラリンピックでは、両者の差がどこまで縮まるかが焦点ともなっている。

 世界トップレベルの3選手に加え、今夏の世界選手権400メートルリレーで銅メダルに輝いた佐藤圭太(26)ら日本のトップスプリンターたちも参加。3年後に迫る一大イベントに向け、障がい者スポーツへの認知度や関心が高まる中、渋谷の路上という異例の舞台は、世界へ向けた格好の発信場所となりそうだ。