【パリ2日(日本時間3日)=木下淳】21年東京五輪覇者で世界ランキング3位の日本が、誇れる銀メダルを獲得した。

初の五輪2連覇こそを逃したが、世界の最激戦種目で2大会連続の決勝進出。同5位ハンガリーに25-26で惜敗も、個人戦で金メダルのエース加納虹輝(26=JAL)が逆境から延長戦まで持ち込み「団体は4人で喜びも4倍」と全員で分かち合った。全体では今大会3個目。この競技に日本が初参加した52年ヘルシンキ大会から72年間で計3個だったメダル数に、わずか1大会で並んだ。黄金時代が到来した。

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息詰まる一本勝負が聖地グランパレを沸騰させた。25-25の延長戦、次の1点を取った方が金メダル。「アンガルド(構えて)プレ(用意)アレ(始め)」。フランス語の号令に反応したアンカー加納が高速で駆け引きを始める。緊迫の15秒間。最後は同時突きでもおかしくない僅差で、相手の緑ランプがともった。お祭り騒ぎのハンガリーと肩を落とす日本のコントラストはあれど、功績は色あせない。最終の第9ピリオドに18-20から追いつき、意地を見せた加納は「やれることはやった」と納得した。

前回王者、今回の個人覇者加納も擁す日本は、山田優(30=山一商事)、見延和靖(37=ネクサス)、古俣聖(26=本間組)が「これぞエペジーーン」(見延)と胸を張る“四位一体”で互いの失点をカバーし、得点を積んだ。準決勝はチェコに45-37で2大会連続の決勝進出。自国開催の3年前に続く頂点には届かなかったが、本場欧州で最も種目人口が多く「キング・オブ・フェンシング」と呼ばれるエペ界では快挙だった。

優勝したハンガリーは発祥国の1つだが、この種目の金メダルが実に52年ぶりだったことが裏付ける。その中で競技人口1万人に満たない極東の島国、中でもフルーレより少ないエペの2大会連続メダルは世界を驚かせた。前回は開催国枠による“救済”出場で、今回は予選を勝ち抜いての出場。3年前に「エペの時代が来ます」と話していた山田は「自力での銀メダルなので前回より価値があるんじゃないか」。個人2冠を大会前に宣言し、ほぼ達成と言える金銀の加納も「今回は実力。団体は4人。喜びも4倍」と胸を張った。

リーチが長い選手が有利とされ、小柄な日本人は勝てない通説下、ウクライナ出身ゴルバチュク・コーチの手腕も光った。顔が広く海外遠征のたびに強豪との練習機会を設けられる。レジェンド太田雄貴も「サーシャ(同コーチの愛称)たちのおかげで(メダル)常連国に」。青木雄介監督も「史上最強」を自負し、初の1大会複数メダルを3に伸ばした。五輪初参加の52年ヘルシンキ大会は、用具の購入も兼ねた“記念”参加だったが、以来72年間で3だったメダル数に、わずか1大会で並んでみせた。

黄金時代の到来に、見延は「全種目でメダルを狙えるのは東京五輪に向けて強化してきた成果。見てフェンシングを始める子たちが増えてくれれば」。本場フランスで収めた成功が、さらに未来を明るく照らす。

◆エペ 足の裏まで含む全身が有効面。攻撃の優先権という規定がないため先に突いた方に点が入る。体のどこに剣先が当たっても有効となるため、高身長で腕のリーチの長い選手が有利。他にフルーレ、サーブルの計3種目がある。団体は1チーム3人(リザーブ1)で1試合3分間の総当たり9ゲーム制。45点を先取するか、終了時に得点の多いチームの勝利となる。

◆フェンシングの五輪メダル 参加56年目の08年北京五輪で男子フルーレ個人の太田雄貴が銀を初獲得。同団体が12年ロンドン五輪で銀、男子エペ団体が21年東京五輪で金、加納がパリの同個人で日本の「個人初」金をつかんだ。女子フルーレ団体も前日に銅。「女子初」も歴史に追加した。