【パリ27日=木下淳】世界選手権3連覇中の角田夏実(31=SBC湘南美容クリニック)が、事実上の決勝を、軽々と制して4強入りした。

場内アナウンスなど全く聞こえなくなるほどの大歓声が、相手の背中を押した完全アウェー。地元フランスのシリヌ・ブクリ(25)と対戦。しかし、女王には何の影響もなかった。開始ジャスト1分。伝家の宝刀ともえ投げで一本勝ち。一瞬で場内を静まりかえらせた。

準々決勝までも余裕たっぷりだった。南アフリカ選手に1分3秒で代名詞のともえ投げを発動し、技ありを奪う。すぐ関節技へ移行し、わずか5秒後、こちらも武器である腕ひしぎ十字固めで一本勝ちした。1分8秒だ。

1回戦は、さらに早い秒殺だった。開始29秒、同じようにともえ投げで技ありを奪うと、腕ひしぎ十字固めで一本勝ち。わずか45秒でブラジルの25歳フェレイラを退けていた。

この階級では04年アテネ大会の谷亮子以来20年ぶりの金メダルが懸かる。銅より上で、日本の夏季五輪通算500個目のメダル獲得という節目も重なる。そこに、日本柔道女子最年長の31歳で初出場した角田は、世界選手権3連覇中の絶対女王だ。

146センチだった谷と比べれば、より際立つ161センチの長身。かつて52キロ級で、ジャカルタ・アジア大会やマスターズ杭州大会(ともに18年)で優勝した実力者だった。21年の東京五輪を制した阿部詩にも3連勝していたが、初黒星から形勢逆転で代表争いから後退。「引退も考えた」中で19年10月、まずは東京五輪を諦めず48キロ級へ転向した。

結果、自国の大舞台は逃したものの、同じ21年の6月に行われたブダペスト大会から世界選手権で3年連続V。しかも3大会すべてオール一本勝ちの無双で、谷、阿武教子以来となる記録に堂々と名を刻んだ。

相手からすれば、分かっていても、研究し尽くしても止められない、ともえ投げからの関節技は世界一。柔術、総合格闘技グラップリング仕込みの腕ひしぎ十字固めは、特に強烈だ。かつて3連敗を喫した阿部詩から「テリトリーに入ったら遊ばれる。ヘビのようで不気味」と嫌がられる寝技から、誰も逃げられない。

初戦から、磨いてきた技をそのまま決めていく。31歳11カ月が柔道女子最年長の五輪デビューVへ。日本の500個目まで1勝、頂点まで2勝だ。