米ロサンゼルス・タイムズ紙が18日、「新型コロナウイルスの感染拡大による緊張が続く中で、日本人がファンから抗議者へと転向した今、オリンピックは中止しなければならない」とのタイトルで五輪中止を求めるコラムを掲載した。

かつては壊滅的損害を受けた東日本大震災からの復興を祝うことを目的に「復興大会」と呼ばれた東京オリンピック(五輪)だが、皮肉なことに今は東京五輪そのものが放射能になっていると指摘し、五輪開催に突き進む日本政府や組織委員会を厳しく批判している。

日本では五輪メダリストが引退後に政治家やタレントに転身して人気を博していると紹介し、五輪好きであるはずの日本人の6~7割が自国で開催される五輪の中止を望んでいるのは異常事態であり、その狂気の沙汰の中で10週間以内に東京五輪は開かれようとしていると同紙。反対の理由の1つとして、組織委員会が日本の看護協会に500人の看護師の派遣を要請したことや感染したアスリートのために30の病院に優先的に入院を受け入れるよう求めていることをあげている。

また、日本のワクチン接種率は3%未満であり、より感染力の強い変異種のまん延により、東京のみならず他のいくつかの都道府県で緊急事態宣言が出されている中で、すでに逼迫(ひっぱく)している医療体制からこれ以上の医療資源を転用する理由はないとも指摘。「国民の反五輪感情は、池江璃花子ら選手に向けられ、著名人が聖火ランナーを次々に辞退し、スポンサーは大会に関係する広告の掲載をちゅうちょしている」と厳しい論調で日本の現状を伝えている。

さらに欧米諸国と比較して日本では集中治療室(ICU)病床数が極端に低いことも指摘しており、人口10万人当たりの病床数はドイツでは34、米国では26なのに対して、日本はわずか5床しかないと伝えている。

そんな状況下でも菅総理は「国民の命と健康を守りながら、アスリートにとって安全安心な大会を行う」と繰り返し主張していることをあげ、ついには楽天の三木谷浩史会長がCNNの取材で「五輪は自殺行為」と語るなど著名人からも疑問を呈する声があがっていると同紙。

また、ソフトバンクの孫正義会長もCNBCに「五輪の開催は日本や他の国から恐れられている」と語り、男子テニスの錦織圭ら選手からも厳しい声が出ていると伝え、「五輪を中止するより開催する方が壊滅的な被害が出る」と、これ以上被害を拡大させないためにも中止するしかないと締めくくっている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)