東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)の発言が女性蔑視と批判されている問題について、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(63)が5日、都内で取材に応じた。

「五輪パラリンピックの精神に反する不適切な発言だった」と述べるものの、開催国のオリンピック委員会(NOC)のトップとして正式コメントが出たのは発言から2日後。反応の遅さを指摘する声も上がった。

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山下会長は、JOC臨時評議員会で組織委の森会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言したことについて「不適切な発言だ」と述べた。ただ、発言が出たのは自身が会長を務めるJOCの会合。評議員会では森会長が発言した瞬間に笑いが起きていたこともあり、記者からはその場でなぜ進言しなかったかと問われた。

山下会長は「(笑いが起きたのは)女性差別のところではない」と否定したが、評議員会を取材した記者はその場で笑いが起きたことを聞いている。森会長をたしなめる動きがなかった点については「『ん?』と思った部分もあるが、指摘する機を逸してしまったのが正直な感想」と回答。世論の一部から辞任を求める声が上がっていることには「本人が謝罪されて発言を撤回している。最後まで職務を全うしてほしい」と続投に賛同した。

森会長の発言から2日後の正式コメントとなったことには「昨日は東海大に行かなければならなかった。今日JOCに来ることになっていたので、直接皆さんの前で対応するのが良いと思った」と理由を語った。

ただ、山下会長は開催国のアスリートを統括する団体のトップ。東京五輪を目指す選手らの中にも発言への不満や、開催機運の急落を不安視する声が上がっていたにもかかわらず、JOC会長の見解がここまで表明されていなかったことは、出遅れ感が否めない。

大会関係者の中には開催国のNOCのトップとして、より存在感を出してほしいとの声もある。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が昨年11月に来日した際、菅義偉首相、森会長、小池百合子知事らと次々に会談。コロナ禍で懐疑論が渦巻く中、政治行政の面では明確に五輪開催を目指す道筋をつくった。

次は国民の機運醸成が必要。その考えから「後はアスリートを率いる山下の出番だ」とエールを送り、帰国の途に就いた。そのためには国内アスリートの発信力を高める必要性があったが、山下会長はそのタイミングを逸して今に至る。

国際ニュースにまで発展した今回の事案についても意見表明の好機を逃した。森会長と信頼関係があるなら、JOC会長としての毅然(きぜん)とした意見を早く表明すべきだった。