辞任を表明した東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の後任に浮上した日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(63)を推す声が強まり、有力候補に躍り出ていることが16日、複数の大会関係者への取材で分かった。同日、後任を選ぶ候補者検討委員会の非公開での初会合を都内ホテルで開催。山下氏を含む男女4人ずつの理事が検討委員として参加した。17日の第2回会合で候補を一本化する方針で、週内にも開かれる臨時理事会を経て東京大会の新たなリーダーが決まる。

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15日夜から会長候補に浮上した山下氏が、16日になりさらに関係者の中で推す声が強まってきた。関係者によると、候補者検討委員会ではできるだけ候補者を一本化し、今週中にも開催する臨時理事会に諮りたい考え。

他に候補に挙がる橋本聖子五輪相には国務大臣規範(兼職禁止)などの障壁もあり、周辺に対し就任を固辞しているという。スポーツ庁の室伏広治長官も就任わずか5カ月目という立場があり、就任は難しいとの見方がある。

この日、都内のホテルで開かれた検討委では、検討委内のメンバーでも会長候補となれることが確認された。武藤敏郎事務総長は「検討委員8人の中から新会長候補が選ばれても問題ないことを確認した」と語った。

検討委は極秘裏に進められた。座長で組織委名誉会長の御手洗冨士夫キヤノン代表取締役会長兼社長CEOをはじめ、山下氏、柔道五輪2連覇の谷本歩実氏ら検討委員が続々と都内ホテルに入ってきた。新会長候補を選ぶメンバー構成も、場所も時間も非公表。小さな会議室に集まった委員と武藤氏らが1時間10分ほど協議し、新会長に求める資質を取りまとめた。

アスリート中心、男女半数等の要件で35人の理事から選ばれ、この日までに判明した全8人の検討委員は御手洗、東京都の多羅尾光睦副知事、山下、室伏、IOCオリンピックプログラム委員会の荒木田裕子委員、谷本、体操の田中理恵、競泳パラリンピアンの成田真由美の各氏。室伏氏と田中氏はリモート参加した中、新たな組織委トップに期待する5つの資質=「オリパラに対する深い造詣がある」「ジェンダー平等、多様性、包括性を実現」「国際的活動経験がある」「東京大会の準備状況について理解」「組織運営など調整力を備えている」を定めた。

会議後、取材対応した武藤総長は「東京大会の成否がかかる。ふさわしい資質が決まらなければ候補者は選べない」と初会合では基準を策定。「第2回は明日」と、候補者を挙げる議論は17日と説明した。そこで新たな顔が内定するのか問われると「可能性と言われれば、ある」と一本化を否定しなかった。

「5つの資質」という高い理想をクリアできる人物がいるのか、との懸念には「全て及第点は現実的ではない。必ずしも満たす必要はない」。高さ調節可能なハードルとしたことが、人選の困難さも浮き彫りにした。

組織委関係者によると、今週中にも臨時理事会を開催。検討委で絞り込まれた候補者が諮られる。名前は理事会で承認されるまで、一本化されても明かされない。透明性確保が課題と指摘されながらも、組織委は極めて過敏になっている。