新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪・パラリンピックの1年延期決定から24日で1年。日刊スポーツでは参加国の事前合宿を受け入れる予定だった11自治体の現状を取材した。明日25日には福島・Jヴィレッジから聖火リレーが始まるが、新型コロナウイルスの影響で代表選考会の開催延期など先行きが見通せない。合宿の日程や参加選手の人数も、依然把握できていない自治体は多く、混乱は続いている。

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競泳のイタリア代表選手団などの事前合宿を受け入れる埼玉・所沢市の担当者のため息が、電話口から漏れた。市内にある早大所沢キャンパスを利用して7月上旬から延べ200人の選手や関係者を受け入れる予定だが「はたしていつから、何人来るのか。具体的なことが決まってないのが現状です」。東京五輪・パラリンピックの延期から24日で1年を迎える中、担当者は「今ごろはもっと前に進んでいると思った」と本音を漏らした。

新型コロナウイルスの収束の見通しは立たず、各国の選考会の延期が相次ぐ。五輪代表の確定も遅れている。米国陸上代表の合宿を受け入れる千葉県の担当者は「どの種目の選手がいつ来るかなど、細かなことを決めるのはギリギリになりそうだ」と懸念を口にする。

英国代表選手ら最大800人を受け入れる横浜市は「一般人と隔てる対策は今後詰める必要がある」と先行き不透明な中で準備に追われている。合宿期間中にコロナ感染が発覚したらと危惧するのは、バレーボールのロシア女子代表を受け入れる茨城・日立市。担当者は「不慮の事故が起きたときの責任は国なのか、我々なのか。あやふやな部分がある」と疑問を投げかけた。

合宿期間中の代表選手と住民による交流は接触しない形に限られる。従来抱いていた構想とは大きく変更される。ある自治体の担当者は「リモートで交流してくださいと国は言うが、名乗り出た自治体としては納得いかない。受け入れる意義が薄れる」。明日25日には聖火リレーが始まる。しかし、変異株の出現もあり、開催に否定的な意見はやまない。昨年と似たような状況に、各自治体の不安は消えない。【平山連】

○…南アフリカのホッケー代表を受け入れる予定だった宮城県栗原市は今年1月、国が求めるコロナ対策ができないと判断して合宿受け入れの断念を発表した。担当者は「ワクチン接種の時期と受け入れ時期が重なる。対応に追われて、もてなすことができない」。一方で愛媛・西条市は2月、誘致を進めていたスポーツクライミングのオーストリア代表から訪問断りの連絡を受けた。地元児童が応援メッセージを作るなど準備してきた。担当者は「世界的に終息が見通せないコロナの状況からなので仕方ない」と現実を受け入れた。

◆ホストタウン 東京五輪・パラリンピックに向け、出場国・地域と相互交流を図る取り組み。98年長野五輪で出場国・地域を地元小中学校ごとに応援した「一校一国運動」をモデルにした制度。自治体が相手先の国・地域を選定して登録する。2月末までに517自治体が登録し、参加する国や地域の約9割がホストタウンを持っている。