東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(77)が27日、都内で記者団と懇談し、開催に否定的な大物経済人の発言に対する個人的な見解を語った。

今月、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が23日に「違約金が莫大(ばくだい)だという話はあるけど、しかし、ワクチン遅れの日本に200カ国から選手と関係者10万人が来日して(新型コロナウイルスの)変異株(いしゅ)がまん延し、失われる命や、緊急事態宣言した場合の補助金、GDPの下落、国民の我慢を考えるともっと大きな物を失うと思う」とツイート。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長も14日、米CNNテレビのインタビューで開催について「まるで自殺行為だ」などと批判した。

ともに五輪のオフィシャルパートナーではないが、日本経済界の超有力者。その意見について受け止めを求められると、大蔵・財務事務次官や日銀副総裁を歴任した武藤事務総長は、こう答えた。

「経済界も、人によっていろいろな意見があると思います。中でも、例に挙げられた方々が非常に目立った形で報道されています。しかし、日本経済全体を考えると私は、医療、コロナ感染の問題はありますが、日本経済全体のことを考えた場合、五輪を開催した方が、はるかに経済効果があると思います」

続けて「(孫、三木谷の両氏は)そういう観点だけではなく、いろいろなことをお考えなんでしょう。経済のことだけ考えているのか、それ以外のことを考えておられるのか分かりませんが」とした上で「広く、五輪に関しては中止や延期と言ってる方が、少なからずおられる。我々はその立場を理解できますが、組織委としては、こういう形でやっていけば開催できるのではないか、と示して納得を得られるようにやっていくしかない。昨日の理事会でもご意見をいただきましたが、発信の仕方に工夫が必要かもしれません。そこも含めて、やっていきたい」と冷静な対応を見せた。【木下淳】