男子フリースタイル92キロ級を高谷惣亮(31=ALSOK)が制し、男子では異例となる4階級制覇、史上3人目の10連覇を達成した。東京大会で3度目の五輪出場を狙うイケメンレスラーは、過剰な減量への警鐘を促すために、階級を上げての優勝にこだわってきた。東京五輪代表で唯一出場した男子グレコローマンスタイル60キロ級の文田健一郎(25)は、2年ぶり3度目の優勝を果たした。

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日本一を争う年末の大会で、10度目となった高谷の恒例のパフォーマンス時間。新たな階級を危なげなく制し、決勝を終えると、NiziUの「Make you happy」の縄跳びダンスを踊りきった。「今年1年はNiziUの1年。僕自身は30(さんじゅー)なので、20(にじゆー)にも気持ちは負けず、頑張っていきたい」と笑顔の誓い。気持ちだけでなく、肉体でも負けていない。

今大会は92キロ級にエントリー。3月の東京五輪アジア予選は86キロ級だが、「力が強い選手をどうさばけるか」と挑んだ。結果は2試合とも完勝。決勝は開始5秒で右足に飛びつき、そのまま持ち上げて点を奪った。「重さは感じなかった」と、「86キロに合わせた仕上げ」に手応えあり。1分30秒足らずでテクニカルフォール勝ちで試合を終わらせ、「4階級にまたがって優勝。いままで初と自負しています」と誇った。

コロナ禍を振り返り、「SNSでいろんな高校生と交流し、疑問を受け取ったり。人としても成長できた」という。特に強調したのは減量。「体重の4%を超えると体にダメージが残る。8キロ以上は階級を上げた方が良い」など具体的な助言を続けた。自身は初めて全日本を制した11年は74キロ級。14年には同階級で世界選手権銀メダルも得たが、「10キロ減量していた」。体が悲鳴を上げる実体験から、この数年で階級を上げてきた。「自分が勝てば、ナチュラルに近い階級でも勝てると思ってもらえる」。そんな使命感がある。

3月のアジア予選は2位以上で五輪切符も、「2位じゃダメ。優勝して、高谷なら必ず金メダル取ってくれるという期待を背負って戦いたい」。端正な顔立ちから74キロ時代の愛称は「タックル王子」。本人は「いまは『タックルおじさん』」と笑うが、年を重ね、階級増でも向上し続ける。「三度目の正直での金」。それがなれば、最高のメッセージになる。【阿部健吾】

○…西口強化本部長が、2月のアジア選手権へ選手を派遣する意向を示した。外務省の感染危険レベルでは「渡航はやめてください」というレベル3に該当するカザフスタン開催も、「東京五輪のためには、行きたい選手をバックアップしたい」とした。東京五輪代表では女子の川井姉妹ら5人、男子はフリー74キロ級の乙黒圭が参戦を希望する。

◆高谷惣亮(たかたに・そうすけ)1989年(平元)4月5日、京都府生まれ。小学校時代は空手で黒帯取得も、兄弟の影響で中学1年で本格的にレスリングを開始。網野高では総体優勝。拓大時代の11年全日本選手権で初優勝。ロンドン五輪16位、リオデジャネイロ五輪7位。14年世界選手権銀。五輪を含めて同級での日本勢のメダルは18年ぶりだった。177センチ。