【家族の力・大勢〈1〉】生後半年の命を救った研修医 帰宅直前「ちょっと待って!」

Bクラスに終わった2022年の巨人にあって、大勢投手(23)が強烈な輝きを放ちました。サイドハンドから強い直球で押し込む本格派。闘争心も申し分がなく、勝敗の矢面に立つ老舗球団の幕引き役をまっとうしました。強心臓も納得の子育て論と、タイトル通りの「家族の力」でピンチを乗り越える姿。取材後記を含めた4話連載です。

プロ野球

★大勢の人に心配され誕生 名前の由来に

嵐の日だった。1999年6月29日。広島、福岡を中心に大きな被害をもたらした「6・29豪雨災害」。

JR博多駅が水浸しになった日、兵庫県多可町で巨人大勢投手(23)が生まれた。

「もう…必死になって産みました」と母いずみさん(55)が当時を振り返る。

◆大勢(翁田大勢=おうた・たいせい)1999年(平11)6月29日、兵庫・多可町生まれ。西脇工では2年秋からエース。関西国際大4年秋に157キロを計測。21年ドラフト1位で巨人に入団した。今季開幕戦で、史上2人目のルーキー開幕戦セーブを記録。勢いに乗り、史上初となる初登板から7試合連続セーブもマークした。抑えに定着し57試合に登板、1勝3敗37セーブ、防御率2・05でセ・リーグの新人王を獲得した。181センチ、88キロ。右投げ右打ち。4100万円増の年俸5700万円で2年目の契約を更改。

予定日から遅れること1週間で陣痛が来た。5歳の姉あかりさんと4歳の兄勝基さんの子守の真っ最中。事情をわかってくれるはずもなかった。

「晩ご飯だけ作っていこう」と何が食べたいかを聞いた。返ってきた答えは「オムライスー!」。

心の中で「陣痛やのにオムライスかい!」とツッコミながら、急いで料理を終わらせ、祖父のトラックで病院へ急いだ。

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