【家族の力・大勢〈3〉】「大層言わない!」の超・放任主義はどこへ テレビ前で脂汗

Bクラスに終わった2022年の巨人にあって、大勢投手(23)が強烈な輝きを放ちました。サイドハンドから強い直球で押し込む本格派。闘争心も申し分がなく、勝敗の矢面に立つ老舗球団の幕引き役をまっとうしました。強心臓も納得の子育て論と、タイトル通りの「家族の力」でピンチを乗り越える姿。取材後記を含めた4回連載の第3話。

プロ野球

★まもなく9回…トイレへ

「佐野がくるか、村上か? サトテルくるか、大山か?」

7、8回になると、テレビの前で巨人大勢投手(23)の母いずみさん(55)の鼓動が高まる。9回に回ってきそうな相手の打順を計算する。

「嫌な予感がするときもあるんですよ」。8回になると緊張が高まり、腹痛に襲われる。トイレに駆け込んでも緊張は収まらない。食欲もない。家族と会話もする余裕もない。

「しゃべりかけんとってって。なんでそんなしゃべるの?」と脂汗をふく。

小学生時代、広島の本拠地マツダスタジアムを訪れて記念撮影

小学生時代、広島の本拠地マツダスタジアムを訪れて記念撮影

幼い子どもたちに「大層大層言わない!」と言い続けてきた楽観的な母親の姿はない。チームの結果を左右する守護神の役割。母親だからこそ、その責任の重さを重々理解している。

いよいよ9回。愛息がマウンドへ。なんとも心臓に悪い。

テレビ画面で見る、真剣勝負する息子の表情は、よく知っている表情とはちょっと違う。

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