【生駒と天理の友情〈2〉】天理が招待 アルプスに生駒の3年と横断幕/2023卒業

昨夏の決戦は、秋に幕を閉じました。2022年の全国高校野球選手権奈良大会は全国王者の経験を持つ天理と生駒の顔合わせになりましたが、生駒がコロナ禍でベストメンバーをそろえられないまま臨戦。試合は21-0と天理の圧勝に終わりましたが、生駒の苦境に配慮した天理ナインは喜びの感情を抑え、静かな幕切れを選びました。さらに天理の中村良二監督(54)が3年生による練習試合を提案し、9月11日に実現。互いが互いを思い、深い交流が生まれた背景を5回連載で綴ります。(敬称略)

高校野球

天理に感染者が出ませんように…

2022年7月28日の全国高校野球選手権奈良大会の決勝は、天理が21-0で生駒を下した。準決勝の夜からコロナ禍に見舞われた生駒は、主力メンバーの大半が高校最後の試合に臨めないまま、夏を終えた。

例年なら、夏の公式戦を終えた直後から始まる新チームの秋への準備。そのメドも、すぐには立たなかった。

生駒監督の北野定雄は引退する3年生を含めた部員たちのケアに努める一方、大きな不安を抱えていた。

北野決勝戦でうちと対戦したことで、天理高校にうちのようなコロナの感染者が出るような状況を作り出してしまったのではないかと…。甲子園の開幕前のPCR検査の結果が出るまで、私も部長も3年生も同じ思いやったと思います。とにかく何もないことを祈る、ただそれだけでした。全員が大丈夫だったということを聞いて、ようやくちょっと落ち着いて新チームのことを考えようかと。そんな状況でした。

準決勝・智弁学園戦での勝利を喜ぶ生駒の選手と北野定雄監督ら。この夜、コロナ禍に見舞われた=2022年7月26日

準決勝・智弁学園戦での勝利を喜ぶ生駒の選手と北野定雄監督ら。この夜、コロナ禍に見舞われた=2022年7月26日

不運に見舞われてなお、相手を思う気持ちが生駒の3年生にはあった。

北野夏を迎える前、だんだんと見えてきたんです。これは私学と勝負できるというものが。大会前の6月に苦しんで、いろんな課題を与えられて、苦しんで悩んで、その中から自分たちで練習の形を変えて、自分たちのできる、やってきたことをさらに突き詰めて。6月の後半になってきて、ある程度の私学とも勝負できるようになっていって、最後には勝ちだした。

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古代の王国トロイを発見したシュリーマンにあこがれ、考古学者を目指して西洋史学科に入学するも、発掘現場の過酷な環境に耐えられないと自主判断し、早々と断念。
似ても似つかない仕事に就き、複数のプロ野球球団、アマ野球、宝塚歌劇団、映画などを担当。
トロイの 木馬発見! とまではいかなくても、いくつかの後世に残したい出来事に出会いました。それらを記事として書き残すことで、のちの人々が知ってくれたらありがたいな、と思う毎日です。