【生駒と天理の友情〈4〉】天理･中村監督の宝物　朝日新聞の切り抜き／2023卒業

昨夏の決戦は、秋に幕を閉じました。2022年の全国高校野球選手権奈良大会は全国王者の経験を持つ天理と生駒の顔合わせになりましたが、生駒がコロナ禍でベストメンバーをそろえられないまま臨戦。試合は21－0と天理の圧勝に終わりましたが、生駒の苦境に配慮した天理ナインは喜びの感情を抑え、静かな幕切れを選びました。さらに天理の中村良二監督（54）が3年生による練習試合を提案し、9月11日に実現。互いが互いを思い、深い交流が生まれた背景を5回連載で綴ります。（敬称略）

高校野球2023.04.10 11:00

堀まどか

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20年vs奈良朱雀　主軸の欠場

2022年9月11日、秋の月が見守る中、天理と生駒の再試合は終わった。スコアは3－2で、天理が生駒を上回った。だが、勝者も敗者もない。両校が互いの健闘をたたえ、唯一無二の時間を楽しんだ。

7月28日の奈良大会決勝は、生駒の主力メンバーの大半が新型コロナウイルス感染で出場できず、天理が21－0と圧勝。試合後、天理監督の中村良二は生駒ベンチに向かい「落ち着いたら、3年生で練習試合をやりましょう」と伝えた。忘れられない夏を思い出していた。

歓喜の天理ナインに駆け寄る生駒ナイン＝2022年9月11日

20年7月。コロナ感染拡大の影響で、春に続いて夏の甲子園も中止に。各都道府県大会の代わりに、都道府県高野連による独自大会が開かれた。3回戦で、天理は奈良朱雀と対戦。

その試合に、奈良朱雀の3年生の中心選手が出場できなくなった。家族に感染者が出て、濃厚接触者と認定されたためだった。不運を知った中村は奈良朱雀に練習試合開催を呼びかけ、8月8日に天理の親里球場で両校は対戦した。

中村センターのレギュラーで、投手もするし、中軸打者。7月の試合では、その子が抜けていたんです。練習試合では先発投手で1番で来て、9回2死から最後の打席に立ったときにうちの方からもすごい声援があって。ホームラン性の当たりをガーンと打ったら、フェンス手前で捕られて終わったんです。

｢たぶん立ち向かえなかった｣

試合後、両校で写真を撮った。真夏のひまわりのような笑顔が、写真に咲いていた。昨夏の7月28日、決勝後。奈良朱雀ナインの笑顔が心に浮かび、いてもたってもいられなかった。2年前の夏には、続く話があった。

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編集委員

堀まどかMadoka Hori

古代の王国トロイを発見したシュリーマンにあこがれ、考古学者を目指して西洋史学科に入学するも、発掘現場の過酷な環境に耐えられないと自主判断し、早々と断念。
似ても似つかない仕事に就き、複数のプロ野球球団、アマ野球、宝塚歌劇団、映画などを担当。
トロイの木馬発見！とまではいかなくても、いくつかの後世に残したい出来事に出会いました。それらを記事として書き残すことで、のちの人々が知ってくれたらありがたいな、と思う毎日です。