【大谷翔平を語ろう】渡辺謙「道をまっすぐ進んで、その後ろに光が射して」/連載3

人はなぜ、この男に魅了されるのでしょうか。ドジャース大谷翔平投手(29)という唯一無二の存在は、国籍を超越して人々の心をわしづかみにします。あなたの思う大谷論とは―。エンターテインメントの世界で、道なき道を切り開いてきた俳優の渡辺謙(64)が雄弁に語りました。

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◆渡辺謙(わたなべ・けん)1959年(昭34)10月21日、新潟県生まれ。78年、演劇集団円の研修生として蜷川幸雄氏演出の舞台「下谷万年町物語」の主役に抜てき。87年のNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」主演。03年、米映画「ラストサムライ」でアカデミー賞助演男優賞などにノミネートされ、ロサンゼルスにも居住。「硫黄島からの手紙」などハリウッド作品に数多く出演。15年からは米ブロードウェーなどで上演の舞台「王様と私」に出演し、トニー賞主演男優賞候補に。熱狂的な虎党としても知られる。血液型A。

■「彼は毎日ライブをやっている」

渡辺も米国で、そして世界で認められている日本人の1人だ。「渡辺謙」という看板を背に、ハリウッドにブロードウェーに、立ってきた。

だからこそ、感じるであろう「大谷翔平がなぜ最高峰で認められるのか」を聞きたかった。

「まずは結果が大事だと思うんです、アメリカって。僕らで言うと作品だったり、アスリートだったら勝ち負けになる。

結果は優先されるとは思うけど、彼の場合は〝全部〟なんですよね。言動や、行動を含めたたたずまい。そういったものが、今までのアスリート像を塗り替えるような、ある種のしなやかさと、柔らかさと、たくましさみたいなものを、兼ね備えた人間として認められている。そこが僕なんかが感じる一番大きな違いだと思うんです」

役者は、カメラの前なら「カチンコ」とともに別の人間を演じる。一方で大谷翔平は、グラウンドに立ち続ける時間すべてが「大谷翔平」という演者だ。

「ただ強ければいいってものじゃない。相手へのリスペクト、エンジョイの仕方。そういうのって見てて、分かるじゃないですか?

しかも彼は毎日ライブをやっている。たたずまいみたいなものは、ベンチにいる時も塁上にいる時でも感じるわけです、観客は。

僕らはインタビューとかメディアに出るときぐらいしか、オフキャメラって見る機会がないけど、彼はずっと見られているから、そういうところが認められている気がします」

■「明るいタイプの日本人」

かつて野茂英雄がメジャーに渦を巻き、イチローが無数のヒットを天然芝に転がした。強さ、しなやかさ、そして反骨心が見え隠れした。

「(反骨心に)あとはシャイでね。そういう部分はとても日本的だとは思うけど、(大谷は)もっと穏やかだし、陽性なというか、明るいタイプの日本人は珍しいと思うんですよね」

渡辺が「大谷翔平」という名前の存在を知ったのは、花巻東時代だ。

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