【再建ワセダの箱根を追う〈3〉】瀬古、大迫、竹澤、渡辺…壁に貼られた伝説への挑戦状

早稲田大学競走部。東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)で13回の総合優勝を誇る名門はいま、OBの名ランナー花田勝彦(52)を監督に迎え、伝統を更新し、学生駅伝での勝利を目指している。2011年の「大学駅伝3冠」から長く離れる箱根駅伝での優勝への改革とは-。昨年度の闘いを追った「あえぐ名門」に続き、本年度は「-Rebuild-再建ワセダを追う」と題し、昨年度総合6位からのチームの進化を追う。第3回は「早稲田記録」から見つめる、トラックシーズンの「自信」を描く。(敬称略)

陸上

 
 
大迫、竹澤、渡辺、瀬古、花田…壁に貼られている早稲田トップタイム一覧

大迫、竹澤、渡辺、瀬古、花田…壁に貼られている早稲田トップタイム一覧

目に入る場所にレジェンド記録一覧

その紙は、グラウンドの倉庫入り口の重厚な鉄の壁に貼られている。

さまざまな用具が収まり、トレーナーベッドもあって治療などでも選手が出入りする動線。マグネットで止められたA4の1枚の用紙が、伝統の重みと現実を伝えてくる。

「早稲田記録トップ5」

1500、5000、10000、3000障害、ハーフマラソン、マラソン。6種目、早稲田に在籍した時点での名ランナーたちのタイムが一覧されている。

5000メートル 早稲田記録トップ5


(1)13分19秒00竹澤健介  2007年
(2)13分20秒80大迫傑   2013年
(3)13分26秒53渡辺康幸  1994年
(4)13分28秒73花田勝彦  1993年
(5)13分31秒52千明龍之佑 2021年

10000メートル 早稲田記録トップ5


(1)27分38秒31大迫傑  2013年
(2)27分45秒59竹澤健介 2007年
(3)27分48秒55渡辺康幸 1995年
(4)27分51秒61瀬古利彦 1978年
(5)27分54秒06中谷雄飛 2020年

長距離ランナーの名刺代わりの距離とタイムには、いずれも「早稲田から世界へ」を体現した名前がずらり。“最古”は実に45年前の瀬古利彦も残る。

記録の可視化。

この紙が貼られるようになったのは花田体制になってからだった。シューズの改良が続き、世界的に見てもタイムは伸びる傾向がある。その中で、前を行き来する現役生にとって、目の前に「臙脂(えんじ)の伝説」たちの名前は生きる。それはむしろ、「挑戦状」と言ってもいいかもしれない。チーム内だけではなく、歴史との競争がある。「名門」と呼ばれ続ける証左であり、それが気概を生む。

「超えたいですね」

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。