【Rebuild:再建ワセダの箱根を追う】花田改革次の一手、2000万円支援と責任

早稲田大学陸上競走部。東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)で13回の総合優勝を誇る名門はいま、伝統の更新を決断しながら、箱根駅伝をめぐり時代が揺れ動く学生駅伝で勝機を見いだそうとしている。「大学駅伝3冠」を最後に栄光から遠のく苦境に、OBの名ランナー花田勝彦(52)を監督に迎えたのは昨年6月。1月の箱根駅伝では6位と復活の兆しを印象付け、チームはさらなる改革の途上にある。半年間、12回にわたる連載で昨年度の闘いを追った「あえぐ名門」に続き、今年度も密着取材を敢行。「-Rebuild-再建ワセダを追う」と題し、チームが直面している現実に迫っていく。(敬称略)

陸上

 
 
新チーム始動、1月の練習で選手に語りかける花田監督

新チーム始動、1月の練習で選手に語りかける花田監督

目標大きく上回ったクラファン
「早稲田ってすごいんだな」指揮官の実感

その鳴り止まない通知の1つ1つが、早稲田の伝統にとって、新たな鼓動を意味しているようだった。

2月13日は、花田にとっては御礼の文章を書き続ける1日になった。

この日開始した、競走部史上初のクラウドファンディングの募集は、その日のうちに第1目標に掲げた500万円を突破する勢いで、賛同者が名を連ねていった。

1人増える度に、スマートフォンに通知が来る。

「自分が思ってた以上に早稲田の駅伝、競走部に対して興味を持って下さっている方が多くて。嬉しかったのは『今まで応援をしたかったんだけど、どういう形でしていいかわからなかった』との声でした。『こういう形でコンタクトが取れるようになって、すごく良かった』と。こんなにも応援してくれる人がいる、早稲田ってすごいんだなと、あらためて感じました」

1人1人に感謝の言葉を返していった。連綿と続いてきた歴史の重みに感謝しながらも、昨年6月に監督に就任した母校の底力に勇気づけられた。

1年目のシーズンの箱根駅伝を6位で終え、前年度のシード落ちの不振を払拭すると、選手にも、周囲にもこう強調した。

「ここがスタートラインです」

就任2年目のシーズンの始まり。その開始線から踏み出した一歩目こそ、このクラウドファンディングだった。

ここから臙脂(えんじ)に新たな時代がやってくる。そう告げるように、支援の輪が広がっていった。

23年箱根駅伝、早稲田は往路5位、総合6位と前年13位から大きくジャンプアップ。復活の兆しをのぞかせた

23年箱根駅伝、早稲田は往路5位、総合6位と前年13位から大きくジャンプアップ。復活の兆しをのぞかせた

慶應の取り組みから着想
「突出した個の育成へ海外遠征を」

創部は1914年。箱根駅伝では13回の総合優勝を果たし、日本代表にも多くの選手を輩出してきた。「名門」と呼ばれる系譜は、確かに多くの応援者も育んできた。ただ、その声が集合し、直接的に強化費という支援につながるルートはこれまで整備されてこなかった。

「競走部に対しての指定寄付という制度もありますが、それは短距離も含んでいます。ですので、明確に目的が決まっている制度を作りたかった。1つ、窓口ができればいいなと」

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。