58歳の三浦知良はなぜピッチに立ち続けるのか? プロ40周年、老いを生きるとは

日本サッカー界不世出のキング・カズ。58歳130日で迎えた2025年7月6日、日本フットボールリーグ(JFL)第15節・アトレチコ鈴鹿―ヴィアティン三重戦(三交鈴鹿)は「三浦知良プロ40周年特別記念試合」と銘打たれて開催。先発出場した鈴鹿FWカズは三重県内でのサッカー興業最多となる4917人の観衆を前にボールを追い、パスをつなぎ、懸命に走った。還暦が手の届くところとなってもなぜピッチに立ち続けるのか? そのエネルギーの源泉は何なのか? その姿から〝老いを生きる〟とは何かを考えた。

サッカー

JFL鈴鹿対三重 スタジアムに到着した鈴鹿カズ(撮影・前田充)

JFL鈴鹿対三重 スタジアムに到着した鈴鹿カズ(撮影・前田充)

1986年2月にサントスとプロ契約

JFL鈴鹿対三重 プロ40周年特別記念試合に先発出場する鈴鹿カズ(撮影・前田充)

JFL鈴鹿対三重 プロ40周年特別記念試合に先発出場する鈴鹿カズ(撮影・前田充)

この日で58歳130日。赤いちゃんちゃんこならぬ、赤いキャプテンマークがよく似合っていた。

午後6時のキックオフ。強い夏の西日がカズの背中を照らす。気温は30度を超えていた。

プロ40年目。1986年2月にブラジルの名門サントスと契約をかわして以来、時間にして約1万4400日。プロとして一日、一日と紡いできた過ごした日数である。

チームは前半2分に失点。追う展開となった。すると同6分、左サイドのスローインからボールを受けたカズが、巧みなターンで相手選手をかわし、前方へスルーパスを通した。このプレーからゴールネットを揺らしたが、オフサイドの判定でノーゴールとなった。

それでも観衆をわかせるプロの技をしっかり披露してみせた。

JFL鈴鹿対三重 プロ40周年特別記念試合に先発出場する鈴鹿カズ(右端)(撮影・前田充)

JFL鈴鹿対三重 プロ40周年特別記念試合に先発出場する鈴鹿カズ(右端)(撮影・前田充)

前半45分だけのプレーだったが、自陣ゴール前まで戻ってディフェンスをすれば、チャンスとなれば相手ゴール前まで懸命に走った。相手と競り合った際には両手から前のめりに倒れた。どれ1つとっても偽りのないアスリートとしての矜持(きょうじ)が見えるものだった。

JFL鈴鹿対三重 前半、パスを出す鈴鹿カズ(撮影・前田充)

JFL鈴鹿対三重 前半、パスを出す鈴鹿カズ(撮影・前田充)

試合は前半13分までに3失点する最悪の展開だったが、落ち着きを取り戻した前半のうちに1点を返した。カズは後半からベンチに下がったが、仲間を鼓舞し続けた。すると途中交代で入った選手の活躍もあってさらに2点を返し、3-3のドローで終えた。単なるカズのための興業に終わらず、さまざまな魅力の詰まった一戦となっていた。

観衆4917人「勝ちたかった」

試合後のカズは開口一番、自らのことでなく、チームのことを口にしていた。

JFL鈴鹿対三重 後半、チームが同点に追いつき、ベンチを飛び出して喜ぶカズ(中央)ら鈴鹿の選手たち(撮影・前田充)

JFL鈴鹿対三重 後半、チームが同点に追いつき、ベンチを飛び出して喜ぶカズ(中央)ら鈴鹿の選手たち(撮影・前田充)

「お客さんがたくさん来てくれると非常に盛り上がりますし、地域でアトレチコがまだまだ認知されてるかと言われるとまだまだ足りない部分がある中で、今日こうやってたくさん、これだけ、5000人近くのサポーター、応援団が来てくれてね、応援してくれたってことは、すごく大きな、クラブとしては大きな1歩になったんじゃないかなと思います。

勝てなかったのは本当に残念。みんな本当に悔しがってましたし、できることならやはり勝利を見に来てくれているお客さんたちに届けたかったんですけど。ちょっと入り方がね、最初の10分ぐらいで3点取られてしまって、非常に大変な試合になったんですけど、前半に1点返せたんでね、なんとかやってる僕らもね、0-3と1-3ではグラウンドでやってる中で、だいぶ感じ方としてやはり全然違っていたんでね。先週も0-3で負けてしまって、今週も非常に難しい試合だったと思うんですけど、よく最後、本当にみんなで、なんとか引き分けて1ポイント取れたことは良かったかなと。でも本当に勝ちたかったなというふうに思います」

JFL鈴鹿対三重 前半、鈴鹿カズ(手前)らのプレーを見つめる多くの観客ら(撮影・前田充)

JFL鈴鹿対三重 前半、鈴鹿カズ(手前)らのプレーを見つめる多くの観客ら(撮影・前田充)

「みんなの助けがあってプレー」

JFL鈴鹿対三重 試合後、北澤豪氏(左)と談笑する鈴鹿カズ(撮影・前田充)

JFL鈴鹿対三重 試合後、北澤豪氏(左)と談笑する鈴鹿カズ(撮影・前田充)

改めてプロ40周年について問われると、こう回答した。

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スポーツ

佐藤隆志Takashi Sato

Tokushima

1968年(昭43)生まれ、徳島県出身。91年入社。
希望したスポーツ部に在籍し、2010年サッカーW杯南アフリカ大会、12年ロンドン五輪など取材。デスクを経て現場に戻り、再び大好きなサッカーを取材、執筆しています。
少年時代に読売クラブのジョージ与那城のプレーに魅了され、同じくヒゲをはやしたバルデラマ(コロンビア)のトリッキーなプレーにハートをわしづかみにされる。フリット(オランダ)は憧れの偉人。好きすぎて入社後に髪型をまねたところ「ドレッド」と呼ばれたのは懐かしい思い出です。
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