苦節13年、小谷実(34=京都)は今期ようやくS級に上がった。A級では経験できなかった競走に「インを切るスピードから違う。バックからのかかりもえげつない。『すごい』と『やばい』しか出てきません。負ければ悔しさはあるけど、走っていて楽しい」と笑う。

今期S級デビューを飾った小谷実
今期S級デビューを飾った小谷実

とにかくムラの多い選手だった。優勝したかと思えば、次の場所でヨパンパン(予選、一般、一般回り)。「好調そうでも信用して買えんな」と、よく思ったものだ(失礼)。

転機は昨年5月のコロナ禍だった。逃げてもまくられ、まくりに回っても不発のレースが続き「このままでは終わってしまう。レースがなかった1カ月間、真剣に考えた」。川村晃司が率いる練習グループに参加して、厳しいトレーニングを積んだ。今では練習メニューを提案するなどリーダー的な存在だという。

当面の目標はS級点キープだ。練習仲間から「捨てろ」と言われたA級のレーサーパンツも「何があるか分からないんで(苦笑)」と、たんすの奥にしまっている。今は「何ができて、どういう位置づけにいられるか」がテーマ。順調に競走得点を上げて(S1ボーダーの)103点を超えれば、また違った景色が見られるはずだ。