【大上悟・オレに任せろ】

 ◆11R 近畿を率いる男のいないダービーを託された稲垣裕之が初の覇道へ踏み出す。4度のダービー王に輝いた村上義弘が負傷で直前に欠場。「村上さんが決断されたこと。自分にできることをすべてやるだけ」。村上イズムを継承する稲垣が大舞台を駆ける。初日メインは輪界を代表する機動型に成長した三谷竜生の番手回りで使命を果たす。

 村上義ら近畿勢の先頭で果敢に駆けてきた男も若手機動型の台頭で番手回りのレースが増えてきた。「番手は難しい。村上さんの偉大さ、すごさがあらためて分かる」。前場所の西武園G3決勝では脇本雄太の番手を、インで粘った松谷秀幸に奪われた上に、優勝も奪われた。「情けない競走だった。その分も、ここへ向けて仕上げてきた」。

 カリスマのいないダービーで、まずは番手の稲垣に徹する。「1戦1戦、番手の技術を磨いている。絶対にスキルアップしなければならないし、その手応えもある」。さらに今シリーズから参戦投入する新車は「ヨコの動きにも反応できて何でもできるタイプ」。入魂の愛車を駆って、前で駆ける三谷を徹底ガードして気概を示す。

 今年はグレードレース一色の中で価値ある11勝を挙げている。優勝がないだけで稲垣の価値が下がることはない。唯一の6日制G1の中で入魂の4走だ。

 レースは細切れ戦。10歳年下の後輩三谷がこん身の先行で、G2覇者となった郡司浩平、底力のある吉田敏洋を後方に置き去る。番手の稲垣が三谷を守り切って、村上義というカリスマが構築した近畿の流儀を、ダービー開幕のメインレースで披露する。

 直線一気の稲垣と、大外をまくる上り調子の郡司がゴール前勝負だ。3連単は(3)=(2)から総流し。【大上悟】