【ヤマコウの時は来た!】

 ◆11R 

 準決9Rを終え、初めてG1の決勝入りを決めた桑原大志が、敢闘門で「信じられない」といった表情を見せた。ダービーにはそれほどの重みがある。当たり前のように乗っている選手ほど、この重みを理解していると思う。

 そのダービー制覇にふさわしい選手は誰か。武田豊樹や平原康多、浅井康太も十分資格がある。それでもあえて深谷知広を取り上げた。骨折などの影響でここ2年、SS班を逃しているが、なお選手間の深谷の評価は別格だ。「位置取りを考えた方がいい」などいろいろな意見が耳に入ると思うが、変化球を取り入れない。「10年は自力を貫こうと思っています」と言う深谷はぶれることはない。まくりに頼る時期もあったが、近況は先行基本で戦えるようになってきた。

 そして、これが大事なのだが、彼ほど各地に出稽古に行く選手を私は知らない。師匠の金子貴志が「いろんなところに合宿に行く大事さが分かった」と、久しぶりに深谷と合宿に行くことによって、気付かされることが多かったという。知らない相手との練習は緊張感が伴うものだ。それの積み重ねによって本番でも力が発揮できるようになる。

 ダービー決勝は場数が必要だ。先行で勝負できるのは深谷。番手の浅井が有利だが、平原-武田、山田英明-園田匠もすんなりとしたレースにはしたくない。深谷の番手がもつれると、逃げ切りも十分ある。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)