競輪、楽しんでいますか?

 9日、鈴木誠選手(53=千葉)が現役引退を表明した。85年5月のデビューから33年余り。GP、G1を計4冠など、輝かしい成績を残し、惜しまれつつバンクを去ることになった。

今年4月3日、53歳のバースデーに後輩の伊勢崎彰大選手(右)と「53」をつくる鈴木誠選手
今年4月3日、53歳のバースデーに後輩の伊勢崎彰大選手(右)と「53」をつくる鈴木誠選手

 突然のことで当日は電話での取材となったが、その声のトーンはどこか晴れ晴れとした印象。受話器越しに「やり切った」という雰囲気が感じられた。ここ数年、左股関節の痛みに悩まされ、長年のライバルの1人で3歳下の神山雄一郎選手には、宿舎でよくその痛みの話をしていたという。結局、これが引退の直接の引き金になった。来年の松戸ダービー出場を目標に頑張ってきたが、それがかなわず、無念だったと思う。

 ただ、数々のタイトル、グレードレース制覇以外にも、今年4月にはS級で通算3000走という(あくまでも当方調べだが)かつて誰も到達したことがない高みにも立っている。年頭に話したときには自身もこの数字を強く意識しており、1つの区切りを感じていたのかもしれない。

 「周りにいろいろ迷惑をかけるので」ということで引退レースは行わず、13日に引退会見、15日に引退セレモニーを、ともに地元の松戸競輪場で行う。松戸といえば、05年に40歳直前でダービーを制した思い出の地(39歳は当時の最年長ダービー優勝記録)。サマーナイトフェスティバル開催時でファンも多く、最後の晴れ舞台として最適の場所なのではないだろうか。

 当方、入社5年目でまだボートレース担当だった91年、久留米で行われた全日本選抜を1人のファンとして観に行った記憶がある。F1先行・吉岡稔真氏(引退)のG1初登場に沸いたシリーズだったが、勝ったのは鈴木誠選手だった。あの時のマコトは強かった!

 長い間、本当にお疲れさまでした。【栗田文人】