競輪、楽しんでいますか?

27日に終了した西武園F1は、S級が北井佑季、A級が後藤大輝の優勝で幕を閉じた。

北井はデビュー初優勝が当地で完全V。その後のA級戦、そして今回のS級戦も同様で、ここまで9戦負けなしの無双ぶりだ。当地は8月にオールスターが行われるだけに「もしやG1でも?」という妄想まで抱かせるほどの相性の良さと、圧倒的な内容だった。「次(G1高松宮記念杯)ももちろんですが、オールスターも楽しみです」。元Jリーガーの充実した表情が印象的だった。

デビュー以来、西武園無傷の9連勝でVを飾った北井佑季
デビュー以来、西武園無傷の9連勝でVを飾った北井佑季

一方、後藤は当地初出走だったが、同期で連日好タイムをたたき出していた大川剛との直接対決を制した。「ラインで走るのが競輪。今日(27日)は(番手の上野)優太さんのおかげでうまく走れました」と感謝の言葉を口にした。常にファンのことを考えて走る責任感の強さが、日々の取材からもひしひし伝わってくる。大川ともども、近未来の競輪界を背負って立つ逸材だ。

A級は後藤大輝が完全V。S級に昇格する来期以降が楽しみな逸材だ
A級は後藤大輝が完全V。S級に昇格する来期以降が楽しみな逸材だ

さて、当日は神山雄一郎のトークショーも行われ、オールドファンはもちろん、若いカップルも詰めかけ、変わらぬ人気の高さを感じさせた。「デビュー戦でオッズというものを初めて見て、人気になっていたのでビビりながら走っていた。今は心に余裕のあるオッズ(あまり人気がない)なんでね」と爆笑を誘い、王手をかけている通算900勝については「(周りの)900、900という声に踊らされている感じもあるけど、とにかく一生懸命練習しています。この1勝を足掛かりとして、もうワンステップ上がりたい」と飽くなき向上心をのぞかせた。

かつての盟友・後閑信一(右)とトークショーを行った神山雄一郎
かつての盟友・後閑信一(右)とトークショーを行った神山雄一郎

そして「お金を賭けてくれるファンの人に対して、僕は(悪い意味での)適当に練習して、適当にレースをすることはできない。何とか3着までに入って車券に絡みたいと思って走っています。4コーナーで8、9番手でも、ゴールまでの距離も(今後のための)練習だ、と思って突っ込んでいます」とファン、競輪に対する真摯(しんし)な姿勢をのぞかせた。

55歳となった今も競輪漬けの日々は、若いころと全く変わらない。オフの過ごし方を聞かれ「オフ、という感覚がない。体を休めるのも競輪のためだし、それは本当にオフなのかな? という感じ。常に競輪が頭から離れない。休んでいる間も日本中の競輪を見てしまう」と言う。

そして「点数(競走得点)も2桁(100点以下)になってしまったけど、ここからまだやれると思っています。やれると思っているうちに、やれることは全てやりたい。もう少しいいところを見せたいので、もう少し時間をください」と言うと、大きな声援と拍手がわき起こった。

ちなみに、04年当地オールスターでワンツーを決め、この日対談した盟友・後閑信一氏の長女百合亜氏(元選手)の名付け親は神山だ。後閑氏は「(名前の)字画とかいろいろ調べていた時に、ちょうどテレビで北斗の拳をやっていて、見ていた神山さんから『(ヒロインと同じ)ユリアでいいんじゃない? (美しくて)男が群がってるよ(笑い)』と言われたんですよ。神山さんの言うことは絶対なので、即座に百合亜に決めました」とエピソードを明かした。これを聞いた神山は「まさか本当に(名前を)つけるとは思わなかったよ~」と、さらなる爆笑を誘っていた。

その百合亜氏も名前を気に入って、神山に感謝しているという。誰からも愛される輪界の宝。900勝と言わず、まだまだこの先も、ずっとその勇姿を見せ続けてほしい。【栗田文人】