競輪、楽しんでいますか?

16日に終了した京王閣F2ナイターは1、2班戦が八谷誠賢、チャレンジは坪内恒、そしてガールズが尾方真生の優勝で幕を閉じた。おめでとう!

さて、この開催で少々異色の経歴の選手に出会ったので、ご紹介を。

123期の新人池辺聖(29=神奈川)は名門麻生高から私学最高峰の慶大法学部政治学科卒という超のつくインテリレーサー。大学時代は自転車部で主に長距離種目で活躍し、3年時には30キロのタイムトライアルで優勝するなど、まさに文武両道を地で行く学生だった。

慶大卒の異色レーサー池辺聖
慶大卒の異色レーサー池辺聖

卒業後はインドの世界的な複合企業として知られるタタ・グループの日本支社で、ITコンサルタントの職に就く。だが数年のサラリーマン生活で「自分は致命的に会社勤めには向かない。他人に評価されたくない」と分かり、すっぱりと退社、競輪選手の道へかじを切った。幸い、選手には新村穣(神奈川、法大)青野将大(同)小林泰正(群馬、日体大)宮本隼輔(山口、中大)曽我圭佑(熊本、明大)といった大学時代からの知り合いが多くいて、相談もしやすかったという。新村や青野のつてで小原太樹の門をたたき、選手養成所にも一発合格した。

とはいえ、プロの世界が甘い訳はない。大卒後のブランクは大きく、養成所時代は「とにかくきつかった。5年間全く自転車に乗っていなかったので体力が落ちていて、周りについていくのが大変だった」と苦笑いで振り返る。さらにデビュー後の8月富山で落車(再入6着)して右ふくらはぎを肉離れ。この影響は大きく、ここまではとても順風満帆とはいえないデビュー1年目だ。

それでも今回の京王閣では予選で逃げ切り勝ちを決めるなど、1<1>(4)と2勝を挙げ、落車後初の決勝進出を決めた。復調気配を感じさせる動きで「1着を取れれば自信にもなる。徐々に調子も戻ってくると思います」と表情も明るい。悪い流れも底を突き、いよいよ上昇気流に乗ってきたか。

次走は23日からの宇都宮の予定。将来が約束されたエリートの世界を捨て、あえていばらの道へ。自らの決断に後悔はない。池辺の今後を見守り、応援したい。【栗田文人】