【ヤマコウの時は来た!】

 特選10Rから村上義弘をピックアップした。昨年の感動的な名古屋ダービー優勝から1年たった。あの熱狂的ともいえるファンからの声援は、村上が戦ってきた道程が間違っていなかったからだと思う。選手は対戦相手とも戦うが、同時にファンとも戦わないといけない。

 昔の選手はファンとも戦ってきた。その戦いぶりがファンの胸を打ち、ギャンブルの枠を超えて金網越しに声援を送った。しかし今は、そういったファンは減ってきたように思う。

 初日の東龍之介の競りは、見ようによっては中川誠一郎のまくりを誘い出したかもしれないが、彼は自分のスタイルを確立するために戦った。それを続けて結果を出すことがファンと戦い、また支持を受けるということだ。

 今も村上に人気があるのは強いからだけではない。選手と戦い、ファンとも戦ってきた結果だ。それを間近で見てきた稲垣裕之もいつも以上に気合を入れてレースに挑んでくるだろう。玉野G3で武田豊樹、新田祐大に完敗したが、ここは名誉挽回の意味も含めて全力で挑む。

 新田を攻略するのは誰か。それは失敗を繰り返しここまで強くなった稲垣だ。その稲垣に託す村上に期待しよう。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)