令和初のG1覇者・脇本雄太(30=福井)が競輪史に輝く大記録を打ち立てた。最終ホームからの豪快なまくりで完全優勝。ダービーでは、86年の滝沢正光氏(現日本競輪学校校長)以来34大会ぶり、史上7人目となる快挙を達成した。G1の完全Vは98年オールスターの山口幸二氏以来、21年ぶり。通算3度目のG1制覇は記録ずくめになった。

令和元年のダービーは、平成元年生まれの脇本の独り舞台になった。ラスト1周。「相手の動きに動じずに、仕掛けるところだけ見極めた」と、8番手から満を持して発進。イエローラインのさらに上、3車並走を異次元のスピードで乗り越えた。文句なしの完全優勝。平成で誰も成し遂げられなかったダービー完全Vの偉業に「自分では自覚していなかったので、この場に立つとすごい努力をしたなと感じます」と、満面の笑みでファンの声援に応えた。

G1完全優勝は、98年山口幸二氏のオールスター以来、21年ぶり。競輪史に残る大記録と同時に、記憶にも残る強さだった。単騎で挑んだゴールデンレーサー賞(GR賞)は9番手まくりで完勝。バンク記録に0秒1差の上がりタイム9秒1だった。それでも、満足できなかった。GR賞で試したフレームは、この1走だけで人に譲った。レース後は常に「まだ納得していない」と言い続けた。

「進化し続けないといけない。止まっては駄目」。それは、最大目標である来年の東京五輪でメダルを取るためだ。東京五輪のケイリンに脇本が出られる保証はまだない。「ブノワ(ナショナルチームHC)からは、『お前しかいないと言わせてくれ』って言われているので」。競輪同様、競技でも最強を示す戦いに挑む。

今後は、5月27日からのロシア・トゥーラでの競技大会を皮切りに3大会でケイリンとスプリントに参戦。競輪は6月高松宮記念杯が照準になる。「近畿地区のG1。近畿で一致団結して宮杯でまた勝ちたい」。新時代令和は「脇本無双時代」の幕開けになった。【山本幸史】

◆脇本雄太(わきもと・ゆうた)1989年(平元)3月21日、福井市生まれ。科学技術高卒。競輪学校94期で在校成績は11位。デビューは08年7月福井。G1優勝は18年8月オールスター、同10月寛仁親王牌と19年日本選手権。G2は19年ウィナーズC。自転車競技で16年リオ五輪ケイリン出場。17年、18年W杯でケイリン金メダル。19年アジア選手権ケイリンでも金メダル。通算731戦263勝。通算獲得賞金は5億5356万9600円。180センチ、82キロ。血液型A。