松浦悠士(29=広島)が3度目の決勝挑戦で悲願のG1制覇を果たした。平原康多をさばいた清水裕友の番手まくりを差し切り、広島勢として初めてのタイトルを手にした。2着に清水、3着には諸橋愛が続いた。

競輪発祥の地・小倉に、新時代のヒーローが誕生した。松浦だ。最終4角。空けた車間をグングン詰め、清水をゴール前で差し切った。右手を大きく回すド派手なガッツポーズ。涙はない。トレードマークのビッグスマイルで、出迎える仲間の輪に飛び込んでいった。

「清水君とワンツーで、本当にうれしい。後ろに諸橋さんがいるのが分かったので、ギリギリまで待ちました。準決だけ緊張したけど、清水が頑張ってくれました。頼もしい」。素直に相棒に感謝した。

「何年か前までは(地元の)広島記念を取れればいい、という選手でした」。競輪界では上位。そこで満足してしまう自分がいた。昨年11月の防府G3決勝。清水の番手を回りながら、不覚にも連結を外した。清水はその後、GP出場を決めた。「今のままでは駄目だ。裕友と同じくらいの脚力がないと」。1年前、追走すらままならなかった清水を、準決に続き、2度差したのが何よりの成長の証しだ。

初GPへ、賞金ランク9位で競輪祭を迎えた。2カ月ごとに合宿を共にしてきたという同県の吉本哲郎は「さすがに賞金がかかっていた時はピリピリしていた。GPの話はしないようにって」と明かす。身近な人間が感じるほどの重圧に打ち勝った。「賞金じゃなく、タイトルで出られて本当にうれしい」と松浦。これで清水との2車で暮れの大舞台に立つ。いずれもレースをかき乱す自在型。“山陽革命ライン”が立川を沸かせる。【山本幸史】

◆松浦悠士(まつうら・ゆうじ)1990年(平2)11月21日、広島市生まれ。広島工卒業。98期生で在校成績13位。10年7月に熊本でデビュー(準優勝)。824戦216勝。通算獲得賞金は2億6257万2011円。168センチ、73キロ。血液型O。