ガールズケイリン10年の歴史で、最も衝撃的なニュースが走った。新女王の高木真備(27=東京)が東京・京王閣ナイター最終日が行われた3日、21年ガールズグランプリ(GP)の優勝報告会で突然「引退」を発表した。


ガールズGP優勝報告会で引退を発表した高木真備はファンに向けて笑顔で手を振る
ガールズGP優勝報告会で引退を発表した高木真備はファンに向けて笑顔で手を振る

ガールズGP優勝報告会で引退を発表する高木真備
ガールズGP優勝報告会で引退を発表する高木真備

「競輪選手を引退することに決めました。たくさんの方に応援していただけて、すごい私の競輪人生は幸せだったなと思っています」。集まったファンが驚く中、高木は言い切った。


ずっと思い描いてきたガールズGP制覇の夢。14年5月のデビューから7年半かけて昨年末、5度目の挑戦で成し遂げた。しかし、新女王として迎えた今年は肉離れや腰痛にも悩まされ、宇都宮ガールズケイリンコレクション(6着)を含めて5場所走っただけ。優勝は1度もなかった。


「これまで10年近くもガールズGPで勝つことを目標に、競輪と向き合ってきました。目標を達成したことで、気持ちが切れてしまった。その後も我慢して走ったけれど、自分から買ってくれるお客さんの期待を裏切ることに、自分が耐えられませんでした」。家族や同期に伝えたのは前日2日だったが、3カ月間、自問自答を繰り返し「引退」という決断に至った。


ガールズGP初制覇のゴール後に涙を流す高木真備
ガールズGP初制覇のゴール後に涙を流す高木真備

 
 

同じ106期の小林優香、奥井迪、石井貴子(千葉)はデビューしてすぐに活躍した。当初は歴然とした実力差があった。しかし、明るいキャラクターと、けなげに先行を続ける姿がファンの心をつかみ、押しも押されもせぬ人気レーサーとなった。高木隆弘(64期)に師事してからは、脚力とレースセンスに磨きがかかった。先行していた人気に実力が追いついた。そして昨年末、ついにガールズケイリンの頂点に立った。


やり残したことはない。「新女王になったからこそ、新たなステップに進めるんです。諦めないで最初に決めた目標を貫き通せたことは、自分の今後の糧にもなるし誇りに思いたい」。ファンの間では愛犬家として知られており、かねて興味があった保護犬、保護猫に関わる活動を次のステップとして計画中だ。


今後の出走予定はなく、3月29日の川崎最終日が最後のレースとなった。「実質のラストランは川崎でしたけど、自分の中ではガールズGPが最高の終わりだったって思っている。競輪人生のゴールだったって、皆さんにも思っていただければうれしいです」。史上初めて女王のまま引退した高木は晴れやかな表情だった。


ファンの声援に笑顔を見せながら京王閣バンクを後にする高木真備
ファンの声援に笑顔を見せながら京王閣バンクを後にする高木真備

◆高木真備(たかぎ・まきび)1994年(平6)8月17日生まれ、東京・町田市出身。文化学園大杉並高卒。中学からハンドボールを始め、3年時の09年ジュニアオリンピックカップ3位。競輪学校(現選手養成所)106期在校2位で、14年5月に奈良でデビュー(予選5、2着、決勝2着)。ガールズ特別レース優勝は16年松戸、20年伊東ガールズケイリンコレクション、17年いわき平ガールズドリームレース、20年同ガールズケイリンフェスティバルと21年静岡ガールズGP。通算616戦379勝。総獲得賞金は1億1926万2100円。161センチ、63キロ。血液型A。愛称はマキビ、マキビーム。